ホトトギス
   
暮らしとの関わり

春になると南から渡ってくる夏鳥で、大きな声で啼くのでその存在は容易に知れる。そして、数も少なくないがその姿を見ることは多くない。あの林やこの林から、“東京特許許可局”と聞きなせる誰にも分かる歌声が聞こえる。たまに林から林へ飛ぶ姿を目撃するが啼いているところを見ることはない。最近極端に数を減らしている同じ仲間のカッコウは電線の上などで啼いていて姿を見ることはできた。それに比べたら本当に鳥見人泣かせの鳥である。
 カッコウもこのホトトギスもいわゆる他の鳥に托卵する。そのため評判はよくない。その一方、他の鳥が食べない毛虫が大好きとされている。山の樹にとっては大切な益鳥である。カッコウはオオヨシキリに、ホトトギスはウグイスに托卵する。カッコウの減少はアシ原の開発でオオヨシキリが激減したせいだと思っていたが、最近は耕作されない水田のアシ原化でオオヨシキリは増えている。しかし、カッコウは減少したままである。しかし、ホトトギスが托卵するウグイスの減少はあまり聞かない。石黒でも沢山のウグイスの声が聞こえる。ホトトギスとウグイスの増減は対で考えなければならないが、とりあえずは心配なさそうである。(長谷川)

 ホトトギスは昔の石黒では毎年、田植えの頃、けたたましいほどの鳴き声を朝早くから暗くなるまで鳴き続ける鳥であった。しかし、筆者はその姿は撮影はおろか、木に止まっている姿も目にしたことはなかった。稀に目にするの空を高く飛ぶ姿のみである。同類のカッコウは数も少なく、諦めていたがホトトギスは、そのうちにその姿を間近にみることもあろうと期待していたが80歳を目前にした今日までその機会に恵れずに来た。
 そんな折に、鳥について指導をいただいている方から写真を提供いただき念願のホトトギスの頁を作ることができた。
右欄へ続く
  ここ数日続けて石黒の生家跡の畑の植え付けや、庭掃除に行った。昨日まで聞えなかったホトトギスの鳴き声が5月8日の午前10頃に初めて聞いた。ブナの葉も緑色を増し深緑の一歩手前という景観で、まさにホトトギスの囀りが待たれる時期である。遥かなるインド方面より、よくぞ帰ってきたと長旅の労をねぎらってやりたい気持ちだ。

(写真 2016.6.24 長谷川)

※ホトトギスの鳴き声-2020.5.23板畑-嶽


            電柱にとまっている姿-1
写真2016.6.24 長谷川


解 説
カッコウ科
インドから中国南部に越冬する個体群が5月頃になると日本まで渡ってくる。他の夏鳥に比べて遅い。鳴き声は大きく盛んに鳴くので渡来した時期は容易に知れる。
全長は28pほど。ひよどりよりも少し大きい。頭部と背中は灰色で翼と尾羽は黒褐色。胸と腹は白色で黒い横島が入る(上写真)。目の周りには黄色いアイリングがある(上写真)。ウグイスに托卵する習性がある。
鳴き声は「キョッキョッ キョキョキョキョ!」と聞こえる。
別名としては「不如帰」がよく知れているが中国の伝説にもとづく。



   電柱にとまっている姿-2

写真2016.6.24 長谷川

ところで、筆者のホトトギスに対する印象には少々偏見がある。中学生のころに公民館から借りて読んだ徳富蘆花の「不如帰」からの影響、漱石の書簡集を通して知った正岡子規、そして、筆者の子どものころ(1945)には、結核で若くして亡くなる人が村にいたこともあってか、ホトトギスというと「鳴いて血を吐くホトトギス」という言葉を思い浮かべてしまうのだ。
 鳥にせよ、人にせよ、たわいもない話題が、その後の印象を長く左右することは、留意すべき事であるようだ。