イポメア・フィンブリオセパラ (学名 ※和名は未定)
暮らしとの関わり
 8月の初めに柏崎市の海岸で数株のグンバイヒルガオに出会った。その折に近く(グンバイヒルガオより防波堤にちかい位置)によく似たツル植物を発見した。グンバイヒルガオよりもよく繁茂し既に数年を経た個体であるように見えた。
 蔓の状態や葉の形がやや似ていたために、発見時はグンバイヒルガオと同種かと思ったが、後で別種であることが分かった。
 WEV上で名前を調べたところ、詳しい方よりこの植物は現在富山県立博物館で調査中のIpomoea fimbriosepala(イポメア・フィンブリオセパラ)ではなか、とのご指摘をいただき、富山県立博物館にメールに写真を添付して問い合わせた。折り返し担当の大原氏よりご返信がありIpomoea fimbriosepalaと思われるが、詳しい説明は明日電話にてとのことで、翌日電話で丁寧なご指導を頂いた。お話によると10月半ばには開花するであろうとのことで、楽しみにして観察を続けている。
 なお、富山県での調査研究も進み近いうちに和名も決まり、発表になると思うが、詳しい解説(論文)を是非とも拝読したいものだ。
 また、自分がこのように未だ和名のない植物、とくに海流散布のロマンに満ちた植物に出会ったことは、極めて幸運なことでうれしいことである。
 今日(9.30)に訪れると花が4個咲いていたが、午後2時過ぎであったので花は閉じてしまっていた。翌日、台風17号が日本列島を縦断し柏崎市も1日夜半から未明にかけて強い風が吹いたので、高波に洗われることを心配したが、3日の午前に訪れると無事であり7個ほどの花が咲いていた(上写真)。
 筆者が写真を撮っていると地元の老人が通りがかり「初めて見る草だ」としばらく興味深げにながめていたが、子供の頃にいくらでもあったハマボウフウが激減したことを嘆いていた。その人の話ではその他、カワラヨモギなども今ではほとんど姿を消したとのことであった。
 今日(2012.10.9)3日ぶりに観察に訪れると自生地に通じる狭い道路に次々とダンプが出入りしていた。交通整理に立っていた人に断って立ち入り禁止の所に入れてもらいイポメアフインブリオセパラの自生場所を見ると重機の両キャタピラの間になり運よくそれほどの被害はなかった。
 しかし、話を聞くとここは今後、砂浜への重機の出入りの道となるとのことで数人の方に事情を説明した。幸い工事の現場監督の方もおられたのでその方を呼んでいただき現場で安全なところに移植をお願いした。そして、さっそくショベルカーを移動してきて10mほど先方へ植え替えてもらった。→移植作業ビデオ
 まだ、暖かい時期なので無事に活着してくれることを願っている。また、折しも今日、自分が現場を訪れたこと、そして快く移植作業を承知くださった工事監督をはじめその場におられた方々に感謝している。
 今日(2012.11.2)、[隠岐の植物」というサイトに本ページについての記載()があったので驚いた。どうやら、現在、この植物は日本では非常に注目されている存在のようだ。

写真2012.10.3 柏崎海岸

隠岐の植物→http://okiflora.blog.fc2.com/blog-entry-3.html
今年の9月11日,知夫村島津島の小浜(こばま)という入江で発見。砂利の浜辺に大きな株が2つ広がっていた。花が咲いてないので同定に苦労すると思われたが,他の地域での発見例(島根半島の鹿島町・美保関町 2011,新潟県柏崎市 2012)があって助かった。他には,能登半島(2007),長崎・対馬・天草(2011)の記録がある。九州では2004年頃には気付かれていたそうである。


             海からの位置

写真2012.9.12 柏崎海岸

             立ち上がる先端部

写真2012.10.3 柏崎海岸

               葉の形

写真2012.9.10 柏崎海岸

     蔓先端部の折りたたまれた状態の幼葉

写真2012.9.10 柏崎海岸

                花

写真2012.10.3 柏崎海岸

          雌しべと雄しべ

写真2012.9.30 柏崎海岸

 葉の表裏の拡大写真
   
 写真2012.9.12 柏崎海岸  写真2012.9.10 柏崎海岸


       地面に接した茎から出た根

写真2012.9.12 柏崎海岸

        葉柄の突起と茎の細毛

写真2012.9.12 柏崎海岸

               花期

写真2012.10.9崎海岸


解 説
ヒルガオ科
 中国南部の福建、広東、浙江や、ニューギニア;アフリカ、メキシコ、南アメリカに分布する多年生つる植物。
→資料・世界の分布図
 学名Ipomoea fimbriosepala
 
近年、九州から日本海側の沿岸に種子が漂着し芽を出して成長、開花している。
(※以下は柏崎市海岸の個体観察に基づくもの)
 蔓状の茎は、基部に近い所で分枝し長さは1〜2m。砂上をはって所々から白い根を下し、四方に広がってのび先端部は立ち上がる(下写真)
 茎は赤紫色を帯び、無毛ないし開出毛がある。質は硬く強靭。
 葉柄を折ると白乳液がでる。
 葉は、まばらにつき互生し幅の広いいホコ形、ないしは心臓形で葉の先端は凹み全縁で無毛。質はグンバイヒルガオやハマヒルガオに比べて薄く、光沢もない。
 葉身の長さ7〜10cm、幅6〜8cmほど。葉柄は長く内側に線状の溝があり、下向きのトゲ状の突起が密生する。
 蔓の先端部の幼葉は中脈に沿って内側に折りたたまれた状態で、成長と共に開く。
 花期は9〜10月、葉のつけ根から通常、1個の長い花柄を出し次々と漏斗型の花を咲かせる。花の色は紫色を帯びた赤色。花の径は3.5〜4cmほど。
 ガクは5個で2個は小さく、稜があり歯牙がある。ガクの下に2個の包葉がある。
 雄しべは5個でヤクと花糸は白色で基部に腺毛がある。
 果実はさく果で残存ガクをつけ4個の黒い種子がある。
 


       つぼみ

写真2012.10.3 柏崎海岸

     葉柄の突起

写真2012.9.12 柏崎海岸

   茎の基部 溝がある

写真2012.9.12 柏崎海岸

        乳液

写真2012.8.2 柏崎海岸

 基部に見られるとくに長い柄の葉

写真2012.9.10 柏崎海岸

   つぼみを確認  9.12

写真2012.9.10 柏崎海岸

  葉柄の突起と蔓の開出毛

写真2012.9.30 柏崎海岸

       つぼみ

写真2012.9.30 柏崎海岸

         花 

写真2012.9.30 柏崎海岸

     

      果実と種子


写真2012.10.27 柏崎海岸



※本種についての情報がありましたら、お聞かせください。
E-mail  yokotesimo@yahoo.co.jp
大橋寿一郎 0257-23-1667
新潟県柏崎市松美1-12-43