アブ
暮らしとの関わり
 ウシアブを石黒ではアブと呼び、石黒で「ウシアブ」と呼んだのは別種のアブであり大きさはウシアブの半分ほどで緑がかった斑紋があったように記憶する。よく、石黒川で魚釣りをしていると寄ってきて手足にとまり指されたが痛みは意外に強かった。
 ウシアブは、筆者が子供のころ(1945ころ)、やヤギなどを飼っていたのでウシアブが家の中に入り込み裏口のガラス戸にたくさん集まっていた。
 私たち子どもは、それを捕まえてオモチャにして遊んだ。腹の部分を指でつまむと両ばねを震わせてブンブンという音を立てるのが面白かった。また、翅の付け根についている黄色い小さな器官を取り除くと平衡感覚を失うらしくまともに飛べなくなる、その様子が面白おかしくよくやった遊びであった。それから、捕まえたアブを大きなクマアリの巣の入り口にもっていって、アブを小さな巣穴に引き込む様子を観察したりした。
 ところで、ウシアブは指で相当な力でつぶしたつもりでも一時的には完全に死んだようであるが、しばらくすると生き返る強い生命力に子どもの頃から、今も驚嘆している。指でつぶしても体液など少しも出ないようであるがその辺にその逞しい生命力の秘密があるようにも思われる。
 いずれにせよ、アブは今でも親しみを感じる昆虫の一つである。
 また、稀に一回り大きいアカウシアブ(石黒ではハチアブと呼んだ)が寄って来ることがあったが、スズメバチそっくりであり思わず逃げたものであった。

写真 2016.8.20下石黒  
※写真の胸上部に凹みがあるが、これは捕獲の際に押しつぶしたため出来たものである。
解 説
アブ科
 幼虫は湿った土の中で他の昆虫の幼虫などを捕らえて食べる。 成虫は7〜9月に現れ、オスは花粉や蜜をたべ、メスは牛馬などや鳥の血液を吸う。時には人間の血も吸う。痛みはあるが、普通はそれだけである。ただし、人によっては、かゆみや腫れの症状も現れる。
 体長25mm内外の大型種。全体に黒灰色で、腹部の各背板中央に黄白色の三角斑がある。
 単眼を欠き、羽には斑紋はない。



      背板の三角斑

2016.8.20下石黒