ヘイ拾い
                         田辺雄司
 田植えも終わり6月の半ばを過ぎると、植えた苗もしっかりと根付き日々田んぼの緑が濃くなります。
 この頃になると稲の周りにも小さな草が生えてきます。とくに稲の形に似た雑草のヒエは稲の生育を妨げます。稲と共にぐんぐん生長するので肥料を吸い取り、稲の「ブンケツ」と呼ばれる一株のイネの本数が増えることを困難にします。
 そのため、一回目の除草では、浮きがちな稲株を押さえるようにして、まわりをかき回しながらヒエを取り除くのでした。そのときに、取り残しのヒエがあると次の田の草とりには稲より丈が伸び株も大きくなっています。中には稲株と合体したように生えているヒエもありました。
ケイヌビエ

 ヒエにも種類があって、株立ちになるものもあれば一本立ちのものもありました。特に旺盛なヒエは三角ビエ〔ケイヌビエ−写真〕と呼ぶ、茎の固く太い大株となるヒエで周りの稲の生長を著しく妨げるものでした。
 この三角ヒエは、稲の穂のでないうちに田んぼを回って一本ずつ丹念に引き抜くのでした。根も太く深く入っているので取り去るのは大変でした。
 近頃では、除草剤が使われるようになり田植え後7日〜10日のころに散布すると、ヒエをはじめ他の草もほとんど秋まで生えない便利な時代となりました。