ワッパご飯の思い出

 日の短い稲刈り時に遠山へ行く時はお弁当を持って行きました。おかずは山で食べる時に作るのです。大根、きうり、ナスは丸ごと、それに生味噌と刻みネギなどを持って行き、昼時になると深いワッパの蓋をボール代わりにしてカマを裏返しに渡し、上下に動かして切るのです。

 なかなかみごとに薄く上手に切れるものでした。うっかりナスを忘れたりすると途中でよそ様の畑から二個くらい失礼して頂いちゃうなんてこともありました。スライスした材料を味噌で和えると、これがご飯に一番おいしいおかずとなりました。 少し取り分けておいた味噌和えに持参のネギを振り込んで土手の湧き水を入れると冷やし汁になり、炎天下の昼飯には冷たくて最高の一品でした。
 雨の日は、近くにある他集落の親戚が建てたカヤ葺の山小屋を借りて、寒いので火事にならないよう気を付けながら火を炊いてだ暖をとりながらご飯を食べました。
 濡れた衣類を天井にぶら下げたり引っ掛けたりして乾かしたものです。ときにはヘビが天井を這っている場面に出会い身震いすることもあったことを今でも忘れません。

   文・大 橋 洋 子(福島在住)