昔のミンジョウ〔台所〕と手製のタワシ 田辺雄司 昔の台所は「ミンジョウ」と呼び、食水はかけ流しの家が多かったように思います。厚い板で作った水桶の中に、いつもジョンジョンと音を立てて山の湧き水が引かれていました。 また、流し台はなくミンジョの床に釜を置いて米をといだり野菜を洗いまな板の上で刻んだりとしゃがんだ姿勢で仕事をしていました。 当時〔昭和のはじめや終戦直後〕は、今日のようなタワシは普及しておらず、ワラで作ったタワシやドウヌゲ〔オオヒゲナガカリヤスモドキ〕の根でタワシを作って使っていました。 ワラのタワシは稲ワラの株のクズをきれいに取り去り片手で握れる束にして適当な長さに切断して作りました。〔下図参照〕また、ドウヌケのタワシは、秋に根を唐グワで掘り起こし、きれいに洗って土を落として手頃な形に束ねて作りました。ドウヌケの根は細かく混み合って硬いところと柔らかな所もあり使い道に合わせたタワシを作ることが出来ました。 また、ミンジョの洗い物で使い古したタワシは、釜の炭取りをした後の釜の底を磨くのに使うと大変きれいになりました。
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