富山の薬売り
田辺雄司
春の田植え休みが終わる頃になると、富山の薬売りが大きな風呂敷包みを担いでやって来た。
祖父は薬売りの姿を見かけると、数個の薬箱を出してガンギに並べて薬売りが来るの待っていた。何か、楽しみに待っているように見えたものだ。
やがて、やって来た薬売りは挨拶をしてから、自分の箱を引き寄せて、去年置いていった薬の控え帳をだして箱の中の薬と付け合せをし、新しい薬と入れ替えた。
薬は、数段重ねの柳小折の中にきちんと仕分けされて入っていて、その小折を開けると、ぷーんと薬の香りがしたものだった。
祖父は、使った分のお金を払ったあと、薬売りとお茶を飲みながら楽しそうに色々と話をしていた。
薬売りは、帰るときに薬を、沢山薬を使ったときには紙風船を5個ほど、少ないときには2個ほど必ず置いていった。そのほか、食あたり表を1枚置いていったものだが、それには食べ合わせをしてはならないものが絵入りで書いてあった。
今でも餅と柿、スイカと天ぷらなどの食べ合わせが書かれていたことを憶えている。当時はどこの家に行っても、この食べ合わせ表が張ってあったもだった。
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