ヤマギモン(野良着)の思い出

小さかった頃、祖父や親は野良仕事をするのに着物姿でした。男は股割れ仕立てのモモヒキとあわせギモン、女は山仕事用のヤマモンペでした。 春先のハリキの時はまだ残雪もあって道中は寒いので、男用の腰から上の綿入れ山ギモンもありました。
 また、女用の家の中で履くモンペもありました。冬場は綿入れギモンの上に履くのでゆったり大きめに作ってありました。両脇を長めに開けておく仕立てなので腰紐の締め具合で腰回りの調節が容易に出来る機能的なものでした。
 頭は手拭で、男はねじり鉢巻に女はあねさかぶりでしたが天候や仕事によっては男女共に、ほぉっかぶりに変身という出で立ちでした。足は主に、ぞうり、わらじ、地下タビなどを時々に使い分けて履いていましたが田んぼだけは素足で入っていました。
 後に出回った田圃用の地下タビ風のゴム製の履物は、履く時に履き口がきつくて苦労でしたが、足に傷を負う事もなくなり、ヘロ(ヒル)が大の苦手の私には大変有り難い履物でした。
 時代が和装から洋装へと移り変わると山ギモンは山シャツに、カスリの反物も私達の世代(30年代後半)になると洋装仕立てにして着るようになりました。
 昭和40年代に入ると徐々に生活の向上に伴い、改めて野良着を作る事も少なくなり、モモヒキなど特別な物を除いては普段着のお下がりを野良着に回すような傾向になったように思います。


      大橋洋子 (福島在住)