わら草履の思い出   
             大橋洋子
 私達が子供の頃は冬の履物はワラグツでした。通学の時は、ふかぐつを履いて雪降りの日にはミノボウシやスゲボウシをかぶって通いました。そして昇降口のL字型のクギにぶら下げておきました。
 上履きも素足にゾウリ履きでしたが、ワラゾウリを作る時に、裂いた布を混ぜ合わせたり又、鼻緒も綺麗な色柄物の布を使って仕上げるなど、見た目のきれいなゾウリもあり4ました。  フカグツの底に藁クズを入れると防水と保温になって気持ちが良かったですが、それでも学校から帰ると足が冷たく、見ると指が真っ赤になっていました。真っ先に、ジロ(いろり)に足を突っ込んで火に当たると足の指ががズキンズキンと痛み出しました。足ばかりでなくフカグツもジロの隅で乾かしながら履いたものでした。
 夏場の雨の日にはゴム長靴やゴム短靴、そしてゴムマントやカラ傘をさしましたが、カラ傘は開く時にくっついた油紙の剥がれる音がパリパリーッと聞こえ、脂くさい臭いが鼻を突きました。
 高度成長期に入ると、こうもり傘や、かくまき、フード付防寒マント、羅紗(目のつんだ厚地の毛織物生地)の防寒コートなども使われるようになりましたが、初めの頃は、石黒では未だ手の届かない品物でした。
 間もなく、これらの製品が容易に買えるようになると、冬のワラゾウリやスゲボウシなどは姿を消してしまいました。
 今振り返ると、あの頃を懐かしく思います。
                  〔福島在住〕