ワラグツのいろいろ

 1 フカグツ
  フカグツは長靴と同じ の履物で、昔はクツとともに冬季の代表的な履物であった。昭和の初めの頃までは、高等科にもなると、自分の履くものは自分で作ることが普通の事であった。最初は、父親に作り方を教えてもらいながら作った。
フカグツ
 まず、稲ワラをすぐり〔稲の茎の苞を取り去る〕3把を1把にしてコヅチで柔らかくなるまで叩いた。そして、平足の部分を編み、そのうえに足の形の木型〔桐材〕を置いて踏みつけて、横に出たワラを編んで側面を編み上げた。 かかとの部分は編み方が異なった。初めのうちはなかなか両方の形が揃わないで不揃いのフカグツを履いてス キーや竹スケートなどをしたものであった。フカグツは履き始めは乾いているので軽くて温かかったが、体温でだ んだん雪がとけるとワラが水を含んで重くなった。
フカグツ木型
そして、夕方になり気温が下がると凍ってガリガリになるので足の皮がむけることもあった。昔は、今のように靴下をはける時代ではなかったからだった。

 2 クツ
 クツは、すぐっただけで叩かないワラを使って作った。二つかみほどのワラの株の方をしばり、底の部分を草履 のように編みながら、ワラを横に出す。
クツ
 そして、底に自分の平足を当てて、横に出たワラを四つ編みにして足の長 さほどに編む。編み終わったらまた、草履のようにワラを多くして、ほとんどワラの長さを全部編み、最後はそれを2つ折りにして、底のワラで細い縄をなっておいたもので平足の上で結んで出来上がりだ。
シブガラミ

 クツは履いてもかかとの部分が丸出しのため、隣の家に行くくらいならよいが、遠いところへ出かけるときにはかかとが冷たくなり適さない。それでクツで遠くに出かけるときには、シブガラミというものをかかとにつけて履いたものであった。これらの履物を乾かすのは囲炉裏のうえに下がった火棚に載せておいた。

 3 スッペイ
 スッペイとオソカケは見かけもほど同じような履物である。異なるところは、スッペイは草鞋を底にして上部は爪先だけ十文字に編み、残りのところは横にヌイゴで3ヶ所ほど編んでそれを草鞋にかぶせ、爪先の方は親指と他の指とに分けて履く。
草鞋にかぶせた穂先の方は、四つ編みにして足首に巻きつけて結ぶ。更に、草鞋のひもでも足首に結んで固定する。しかし、それだけでは、膝が冷たいのでハバキを巻いて雪や寒さから膝を守った。
 4 オソカケ
 オソカケもスッペとほぼ同じものであるが、草鞋にかぶせる部分は、爪先の部分を親指と他の指に分ける。そしてその分け目に草鞋のひもを外側から挟み込み、あとは、スッペイと同様の方法で履いた。作るには、オソカケの方が爪先を編むのが手間がかかるので、スッペイの方が一般に多く使われた。昔は、岡ノ町など遠くに出かけるときに、途中、門出などの店で一休みして暖をとる時は、履いたまま、囲炉裏の間に上がり囲炉裏に足を入れて休ませてもらった。玄関にスッペイを脱いで置くとカチカチに凍ってしまうのからだ。このように、スッペイなどをはいたまま、膝頭をついて這うようにして囲炉裏のある座敷に上がることを「ふんごむ〔踏み込む〕」と言った。
  (編集会)