出稼ぎの皆様へ

                     石黒中学校3年 大橋五美
 出稼ぎの皆さん、お元気でしょうか。
 毎日、家族のことを思い出していることでしょう。今年の冬は、小雪かと思っていたのですが、正月を過ぎてドサッと降ってしまいました。そのため、毎日のように雪堀です。
 冬になると、一段と淋しくなります。私の家は父母と私の3人なので、父のいない家の中は大変静かです。吹雪での夜は、囲炉裏の火を見つめて、東京で働いている父を思い浮かべています。一番厳しく、淋しい冬の間、一家の柱である人が出稼ぎに出て留守だと言うことは、とても心細くつらいことです。
 先日、私と同じ集落のお母さんが、雪堀りをしていて、屋根から落ちてきた雪の下敷きになりました。さいわい、頭が埋まらなかったので近所の人を呼んで助けてもらうことが出来てよかったのですが、隣の家が離れていたり、付近に人が居なかったらと思うと恐ろしくなります。
 最近、お父さんが、出稼ぎに出て、冬はお母さん1人という家が増えてきているようです。このことは大きな問題だと思います。また、父と子の対話がいよいよ少なくなると思います。学級で話し合ってみると大部分の人が父親とはあまり対話をしないということでした。これは、単に、出稼ぎのためだけではありませんが、少なかれ影響があると思います。
 しかし、この出稼ぎによって、父の威厳というか、必要さみたいなものが分かってくるようにも思います。毎日なんとなく過ごしてきた生活の中では、今の私たちは父親への感謝の念や、父親の偉大さをそれほど感じないのではないでしょうか。でも、出稼ぎによってそれが少しずつ分かってくるように思います。
 出稼ぎは農家の収入の一部となっています。今や、出稼ぎが主な収入源となってきています。地元には職場はないし、この状態では出稼ぎをやめたくともやめられません。出稼ぎがなくとも生活が出来るようになるのは何時の日のことか分かりませんが少しずつその実現に向けて努力していかなくてはならないと思います。
 今の私たちには大したことは出来ませんが、何よりも出稼ぎ者の人たちに、健康で安心して働いてもらうためにも、一生懸命に長い冬の間、健康で家を守ってゆかなければならないと思っています。 出稼ぎ者の皆さん、毎日お仕事大変なことと思います。一生懸命、家族のために働いてくださるのはうれしいのですが、怪我や病気に注意してください。私たちは皆さんの元気な姿を見るのが何よりうれしいのですから。
 春になったら元気で帰ってこられることを楽しみに待っています。


     出稼ぎ特集号「たかやなぎ」より〔昭和50年1月発刊〕