民具補説
       馬で堆肥、肥桶の運搬時に使用した用具
 私は、子どもの頃から動物嫌いでネコやイヌも嫌いでしたので馬などの大きな動物を扱うことが苦手でした。幸い兄が主に春の田打ち時期から秋の収穫時まで、馬を使ってやっておりました。
 時々、馬小屋の掃除をするときは馬の機嫌を損なわないように好きな食べ物を食わせておいてやりました。とくに手綱をつけるクツワを馬の口の中に入れるのが苦手でした。
馬の荷倉

 昔は、庭先に肥やし置き場(堆肥場)があり、そこに馬屋から馬肥えカギで引き出した敷き藁を積んでおきました。また、夏のうちに山田の堆肥場まで運んでおく人もありました。
 馬で、堆肥を運搬する場合は、荷鞍をつけて底に木の枠を取り付けて枠に丈夫な縄をスダレの用に下げてその先端をまとめて結わくと袋状となるのでその中に堆肥を入れて運びました。目的地に着いたら両方の枠の結びヒモを静かにゆるめて堆肥を下に落とすのでした。特に留意しなければならないのは、運ぶときに左右の堆肥の重量が同じでないとバランスを崩し転倒の危険があることでした。
 もともと馬は足が速く、その上、臆病な動物なので少し足が泥道の深みにはまったりすると急に走り出すので、馬方は気を緩めないで注意しないとひどい目にあうことがありました。
馬の堆肥運び用具
 また、背負い桶(肥やし桶)に人糞などを入れて運ぶときには、やはり荷鞍に図のような長方形の枠を取り付けて肥え桶をその枠木にのせて運ぶのでした。肥え桶を運ぶときには馬のクツワの所を持って出来るだけ静かに歩かせて田や畑の中まで引き入れて下ろすのでした。肥え桶は下ろす時には片方につっかい棒(桐の木の股木)をしてバランスを崩すことのないように留意しました。勿論、肥え桶を鞍につける時にも同様でした。下ろした肥え桶は水を入れてゆるくした物を肥えじゃくで田にまき散らしたものでした。
馬の肥え桶運び用用具
                   文・図 田辺雄司(居谷)