民具補説
            センバ(千歯)
 私が子どもの頃は、稲をハサから下ろし8束を一束にたばねて庭先へいくつもの稲ニオを作り順次脱穀して籾にするのでした。
 当時は火箸の木(タニウツギ)の真っ直ぐな木を切って図のように5本並べて下部の方を二枚の板を組んだ台木に縛りつけてセンバのような道具を作りました。それを逆さにした臼にしっかりと固定して置いてその木の棒の間に稲穂を少しずつはさみ引っ張るとビリビリと音を立てて籾が穂から離れ落ちるのでした。中には長い穂のままのものもありました。
 そんな手製の千歯を使っているうちに鉄製の千歯が普及してきました。どこの家でも購入して、「こりゃ、仕事がはかどるのう」などと言いながら夜遅くまでビリビリと稲こきをしていました。夜遅くまでやると20〜25束くらいは脱穀できるということでした。この鉄製の千歯の時代が何年ほど続いたのかはっきりしたことは分かりませんが、その後、足踏み脱穀機が普及したのでした。
                     文・作図 田辺雄司 (居谷)