民具補説
             大鎌とナタ鎌
 毎年、7月の田休み(農休日)が終わりますと、棚田の田と田の間(石黒ではクロと呼んだ)の草が生えて大きくなり稲の生長を妨げたり、害虫の発生原因となりますので刈り取りました。
 そのときに田の畔周りは普通の鎌で刈ってその外側は大鎌で刈りました。その頃になりますと野草がぐんぐん伸びて、イタドリサイキ(ケナシミヤマシシウド)など2mにも達した草もあり普通の鎌では能率が上がりません。そのため、大鎌を使うのです。大鎌は柄が1.8mほどあり刃の長さも長く作られています。力もいりますが作業ははかどります。
 また、蜂刺され予防対策にも適していました。普通の鎌は柄が短いために手元に近いところで蜂の巣に触れるために、攻撃してくる蜂をよけることが難しいのです。そこは、柄の長い大鎌は2mも先の蜂の攻撃を避けることは難しくありませんでした。
 しかし、大鎌は重量もあり力も要するので一日草刈りをすると相当疲れたものでした。

 ナタ鎌は、普通の鎌より丈夫で刃の厚さも倍以上で重く、主に刈り干し刈りに使ったものでした。刈り干しには茎の堅いヤマハギや灌木の若木を刈り倒して2〜3日間ほど天日で乾燥させてからワラのツナギで株と先端の2カ所を結わえて家にはこんで屋根裏に上げておいて囲炉裏の薪としたものです。
 その他、ナタ鎌は細い木の枝打ちなどにも使いました。 また、ナタ鎌は刃の厚さがあるため刃の部分の角度が急角度であり鋼の部分の減りも少ない上に研ぐにも簡単でした。柄の長さは1肘(ひとひじ)と言って鎌の刃の付け根を握って肘までの長さでした。


文・図 田辺雄司 (居谷)