稲刈り鎌 

 稲刈り鎌は現在でも使われている農具であるが、昭和40年(1965)代に入り稲刈り機が普及するまではもっぱら稲刈り鎌に頼った作業であった。
 鎌の刃は鋸歯で粗めと細かめ歯のものがあった。構造的には柄と刃は鈍角になっている。強い繊維を持つ植物の切除に適する鎌である。
 稲刈り鎌は、ハサ作りや冬囲いなどで縄きり鎌としても多く利用された。 
 本文を書いていると、幼い頃に山間の小さな棚田の畔に立って見ていた黙々と母親が稲刈りをする光景が「サク、サク」という鎌の音とともに遠い記憶の奥から蘇える。
 70余年も前のことなのに、今さっきの事を忘れてしまう呆け頭がこれほど鮮明に憶えているとは不思議というほかない。〔2014.7.12〕