民具補説
              昔のお膳について
 お膳にも色々ありましたが、常時使用しているものは「箱膳−はこぜん」でした。箱膳の中には、ご飯じゃ椀、お汁じゃ椀、てしょ(皿)と箸が入っていました。
 食事が終わりますと、ご飯じゃ椀にお湯を注ぎ漬け物などでこするようにしてきれいにします。さらに、お汁じゃ椀やお皿もきれいにしてから、そのお湯を飲んで箱膳の中に入れて、ふたをしてホロ(座敷に作りつけの戸棚)の中に重ねて入れておくのでした。
内朱膳−二の膳つき

 昔は大抵7〜10人ほどの家族でしたから、間口6尺(約180p)高さ3尺(約90p)の戸棚がお膳類でいっぱいとなりました。
 また、客用のお膳には全部朱塗りのお膳(皆朱膳)と外側が黒く内側が紅いお膳(内朱膳)と全部黒塗りのお膳(黒膳)などがありました。
 居谷集落では昔から、客用膳は使われる行事やもてなすお客によって使うお膳が選ばれました。結婚式や葬式には皆朱膳(
※石黒では葬式に皆朱膳を使う集落は少ない、ほとんどの集落では黒膳か内朱膳を使った)また、学校の先生や役所の職員とかには内朱膳が使われました。そして、一般のお客の場合は黒膳が使われました。言うまでもなくお椀お皿も同様です。
 その他、結婚式などには二の膳(やや小型の二の膳がセットになっていた)も使われたものでした。(上写真)
 しかし、昔は、よほどでなければ二の膳は使用しませんでした。二の膳の料理等はほとんどの人が手をつけず家に持ち帰ったものでした。
 お椀も呼び名があり、ご飯用はオヤワン、味噌汁用はシルワン、おかず用としてはナカオキ、ツボ、ヒラなどがありました。
大盃

 また、結婚式などではオヤワン(一番大きな椀)でお酒を飲むのが石黒では一般的なしきたりでした。日本酒は漆器との相性がよく味も格別であったようです。結婚式では漆器の大盃(右写真)でマワシのみをする事もあったことを憶えております。
                文 田辺雄司(居谷)