民具補説
            大箱(ながもち)
 今も我が家の土蔵の二階の隅に大箱が2,3個あります。この箱の中には昔は夜具布団がぎっしりと詰めてありました。その布団はお客用の布団で夏の土用になりますと、庭に縄(荷縄をつないだもの)を張ってかけたり、ムシロやござを敷いてその上に広げたりして虫干しをしたものです。昔の布団は特に重いので、縄がたるむのを防ぐために所々に竿で支柱を作ったことを憶えています。
 朝、土蔵の二階から取り出すときには、上がり口の引き戸を開けてゴザを階段の上り口に敷いておいて落とせばそれですむのですが、干した後に収納するときには大変でした。そのときには、狭い階段を担ぎ上げなければならなかったからです。
 着物などの細かいものは母は1週間ほどかけて丁寧に陰干しをして土蔵のタンスに収納していました。
 それにしてもあれだけ大きな箱をどのようにして土蔵に二階に上げたものか子どもの頃から不思議でなりませんでした。おそらく、梯子を外して引き上げたものだと思います。
 また、昔の細い道をあんなに大きい箱をどのようにして運んできたものかも想像もつきません。母の嫁入り道具のタンスは隣の村の人2人で背負ってきたと聞いています。私も昔の悪路をタンスを背負って運ぶ人の姿を見た記憶があります。
 車道もトラックもなかった昔は、それしか手段がないとはいえ現在では想像できないほどの苦労であった思います。
             大箱の見取り図

           文・図 田辺雄司(居谷在住)