民具補説 足中ぞうり 足中ぞうりは、わらぞうりの中では、一番簡単に作れるので冬に1日中かけて作れば一夏に履く数の足中ぞうりが作れるほどでした。 しかし、夏になると梅雨の頃などは村道や山道が泥んこ道となるので時には履いて行った田や畑のあたりに捨てて帰ることもありました。時にはこうして捨てられた足中ぞうりを裸足で山に行った人が拾って泥を落としてはいて帰ることもあったようです。 遠い作場の人達は足中ぞうりではなく草鞋(わらじ)を履いて行く人が多くいました。そういう家では冬のうちに沢山の草鞋を作っておいたのでした。 足中ぞうりは別に鼻緒を作ることも要らず造作もなく余った縄で鼻緒をつければできあがるのでした。鼻緒は4本の縄のうち内側の2本の縄で結びつけて作り、そのままヒゲ(縄のまわりの毛状の藁)も取り去らずにそのままで良かったのです。 しかも、「足中」という名のとおり、踵(かかと)までの長さに編む必要は無くヒラ足の半分の長さで良かったのです。(※踵まである草履は農作業には適さず泥道では泥を跳ね上げて使い物にならなかったのでした) よく、山道や田の畔などに泥だらけの足中ぞうりが無残に捨てられているのを目にしたものでした。 文 田辺雄司 (居谷在住) |