民具補説 カンテラ 居谷の集落では昭和17年の春まで配電がおこなわれなかったため、それまで夜は石油ランプやロウソク、カンテラ、手燭(テソク)などの照明具を使ってきました。 子どもの頃はランプのホヤ掃除は子どもの役目でしたが、石油(クソウズ)の液体が燃えるものと教えられ、石油は危険な物という考えが強く頭にありました。そのため、普段、石油は土蔵の中に保管してしておいて必要なだけ小さなビンに小分けして火の気のない便所中に置いたものでした。
石油ランプは座敷にひとつだけで、冠婚葬祭などの時には、近所の家から借りてくるのでした。 カンテラはブリキで作られていて木綿の芯を差して火をつけて使う灯りで台所やニワ(作業場)で使われました。小型の石臼を使うときの照明もカンテラを柱に板を打ち付けて棚をつくってその上に置いて使いました。 また、手燭と言ってカンテラを少し小型にした物でしたが、一寸の間、手に持って使うための取っ手がついていました。私が子どもの頃には寝る前に便所(当時は便所は家の外にあった)に行く時に、この手燭が使われました。祖母はよく「クソウズがもったいないから、早く家に入れ」と私たちをせかせたことを憶えています。 文・図 田辺雄司(居谷) |