昔のスキー乗り
                          田辺雄司
 昔(昭和のはじめ)は、小学生になるとスキーをはき始め、転びながら少しずつ上達するのでした。その頃のスキーは先端にエボ状のものがついていてそこに細いナワを結びつけて、両手で縄を持ってかじをとりながら乗るのでした。
 ストックは竹の棒の先にワラで作ったタワシのようなものを付けて雪にもぐらないように工夫したものを使いました。→参照図
昔のスキー

 また、スキーは兄のお古を使うので小学校の低学年のときには、身長と比べてとても長いスキーをはいていました。服装は綿入れノノコを着て尻まくりをしてフカグツで乗ったものです。
 スキーの金具も手製のもので石油缶の取っ手をスキー板の足の部分の両脇に打ち付けてそこに苧(オ)縄を通してワラグツを固定しました。友達の中には、革製のバンド(締め具のベルト)を買ってもらって使っている子どももいました。
 忘れられないのは、幼いころは、友達とスキーに夢中になりノノコの尻の部分が濡れているのも知らずに夕方うす暗くなる頃まで乗っていました。家に帰るとノノコの尻の部分がかたく凍り始めていることもありました。まだ、幼い頃のことで家の中にスキーの雪もよく落とさずに持ち込んで囲炉裏のそばの焚き物入れの所に立てかけて、ワラグツは火棚の上に上げてもらって乾かしました。母は、「もっと早く帰ってくるどぉ」と言いながらぬれたノノコを脱がせて囲炉裏の枠にかけて乾かしてくれました。自分はすぐにコタツにもぐり込んで温まるのでした。その日の暖かい夕飯の美味しかったことが今でも忘れられません。
 その後、高等科になると、スキー用具もちゃんとしたものを買ってもらってはくようになりました。皮製のバンドに金属の締め具(スイレンと呼んだ)がついていてワラグツの後に回してバッチリと締めることができました。
 また、石黒の本校に通うようになるとスキー大会もありましたが、どういうわけか学校に近い集落の子どもほどスキーを持っていませんでした。それなのに、学校にも備え付けのスキーも当時はありませんでした。ですから、スキー大会といっても名ばかりでカンジキ競争などが主でした。
 高学年になるにつれて、友達とスキーに乗る場所を踏み固めてつくって回転の練習をしたり、竹の棒を立てて回転競技をしたりしました。しかし、今になると、ワラグツをはいてスキーの先端に縄を結んで乗った幼い頃のことが一番懐かしく思い出されます。
 
 (居谷在住)