ドジョウとりの思い出

                                 大橋洋子

 子供の頃、学校から帰ると村外れの用水路でよくドジョウとりをして遊んでいた。近所の仲良しと連れ立って古くなった竹ザルを持って用水路に行き、脱いだ長靴を田の畦に置き、ズボンの裾を膝上までまくり上げて川に入った。
 水の流れに逆らってザルで川底をすくってはザルを回すように振って水切りをした後、泥や砂を手で掻き分ける時のあのワクワク感は何とも懐かしい思い出である。

大野集落 やち

 捕まえたドジョウは頭から広口のビンなどに入れたが時々逃げられ、それをまた逃げられまいと必死で捕まえる格好はドジョウすくいの「アラ、エッサッサァ〜」と余興に出て来るあの踊り姿そのものであった。
 すくい上げたザルの中にはドジョウの他にも色んな生き物がいた。時には共同作業で一人が川しもでザルを仕掛け、もう一人が川上から川底や川端の草下を足で掘り起こすようにかきまわしながら下流へと向かい、「せえぇの!」の掛け声でザルの両端を二人で持ち上げ、ふたりで揺すり顔をおっつけながらドジョウ探しをする。
 大きくても小さくても目的のドジョウがいれば嬉しかった遠い日の、あの頃が懐かしい。その頃はドジョウや田んぼのツブも食卓に乗った時代だった。また、マムシを乾燥した物や、体が弱かったせいかデンデンムシ(カタツムリ)も栄養源として焼いて食べさせられたものだった。
 ドジョウ取りも集団になると田の畦やたんぼの中のドジョウを追いかけては、植えたばかりの稲の苗を踏んでしまうので見つかると「この野郎どもぉー!」と遠くから大きな声で叱られると皆んながクモのこが散らかるようにして逃げたのも懐かしい思い出として残っている。