石黒校の思い出
                          田辺 絹
 始業の鐘にべとだらけの手を着物で拭いて小さな足洗い場の泥水の中に飛び込んで土を落として教室へ駈け込む・・・・。
 石黒校の8年間の思い出がこの制約された原稿用紙では書き尽くせないほど脳裏を駆けめぐる。皆そうだろうと思う。
大橋トシオ氏寄贈二宮尊徳銅像
 唯、私たちが他のクラスと違うところは(昭和20年3月卒業)戦争の真最中のため、出征兵士の家へ春は田植えに、畔の草取り、秋は稲刈りの手伝いをし、食糧の足しにカタクリの根を掘りに山へ(供出の割り当てがあった)落ち穂拾い、イナゴ取りに田んぼへと、また体操の時間はナギナタを振り回し、「面、胴、突き、脛、」と勉強は二の次でした。勉強ぎらいの私は反面喜んで行動していたように思い出される。
 冬になれば隙間から廊下一面に真っ白に雪が吹き込み、風が吹けばガラス戸が、ガタゴトと音を立てる。古い小さな校舎でも私たちには日本一の学校であったと誇りに思う。(後文略)
              閉校記念誌「くろひめ」より