アキニレ
暮らしとの関わり
 上の写真の個体は市街地周辺で撮影した。初めて出会った木であり、遠目で樹形と葉を見た時にはケヤキではないかと思ったが、近づいて見ると葉は厚く艶があり少し異なることに気が付いた。幹を見ると明らかにケヤキとは異なる。小枝をたくりよせてみると葉のつけ根に花芽のようなものが見られるのも意外であった。
 帰宅してWEB上で調べるとアキニレという木であることが分かった。ニレという名前は聞いたことはあるがアキニレは初めて耳にする名前であった。
 更に調べると本州中部以西に分布とあるので新潟県には自生しないことが分かった。
 この木は高台の市街地の屋敷跡にあり植栽であることは間違いない。
 これもWEB上の情報であるがハルニレという木もあり、こちらは春に花が咲くのでハルニレと呼ばれ本州北部や北海道などの山地の冷涼な地に多いといわれる。
 ハルニレの花期は春であるが、どちらも開花から1か月ほどで果実が成熟するという。
 ちなみに舟木一夫の高校三年生の歌詞
「赤い夕日が 校舎をそめて
ニレの木陰に 弾む声
ああ 高校三年生 ぼくら
離れ離れに なろうとも
クラス仲間は いつまでも」

に、ある「ニレ」はどちらであろうか。調べてみると、この歌詞のモデルは、東京都の私立 松蔭高校であると言われてるそうだ。それが事実であれば ハルニレということになろうか。ハルニレはアキニレに比べ公害にも強く都会の公園樹などに植えられているという事からもうなづけよう。
 また、昔は、アキニレの樹皮から縄をつくり、飢饉の際には若芽や種子も食用としたと伝えられる。
 今日〔2019.9.17〕に花を観察に出かけると、思いがけず一週間ほど前に伐採されていた。切断部の水分でかろうじて生きていた小枝の花芽もほころぶ直前まで膨らんでいた〔下写真〕。
 まるで、最近知り合った友を訪ねると思いもかけず急逝していたという心地である。これで、花や果実の撮影はできないことになってしまった。残念でならない。

写真2014.8.27中浜町


              葉のつき方
写真2014.8.27中浜町

                枝の様子
写真2014.8.27中浜町

          ほころぶ直前の花芽

写真2014.9.17中浜


解 説
ニレ科
 本州中部以南、四国、九州に分布する落葉高木雌雄同株
 樹皮は灰褐色で小さな皮目があり、鱗片状にはがれて茶色の斑紋が残る。新枝には細かい毛がある。
 葉は、小形で互生し短い柄があり長楕円形で長さ2.5〜5p、幅1〜2p。先端は鋭く基部は左右不同の鈍形。縁には鋸歯があり重鋸歯も混じる。質は皮質で硬く表面には艶がある。支脈は平行に伸びて鋸歯の先端に達している。
 花期は9月。本年枝の葉腋両性花が数個ずつ集まってつく。ガクは4裂し筒部は短く花被片は長さ2.5mmほどの舟形。雄しべは4個。花糸は花被から伸び出る。雌しべは1個でガクより長く突き出る。花柱は2分している。
 果実は翼果で短い柄があり、長さ1cmほどの扁平な広楕円形。内には2個の種子がある。
 名前の由来は秋に花や実がつくことによる。



      枝の樹皮
写真2014.8.27中浜町

     切り口の様子

2014.9.17中浜
 
        葉裏
写真2014.8.27中浜町

        花芽

写真2014.8.27中浜町