ゴウジ(うじ)ゴロシの臭い
                     
 大橋洋子

春が来て雪が消え、草木が芽吹いて野山が新緑に変わる頃、山菜採りで山の斜面を登る時は、山菜を目で追いながら頼りになりそうな草に摑まりながら山々を渡り歩いたものです。その時カミソリのような鋭い葉型の「カヤ」はいい加減な掴み方をすると指を切ることがありました。

 また、多種の草の中には何気なく握ると、例えようもない強烈な悪臭が手に染み付いてなかなか消えない草がありました。その草の名前が、「トウキ(ニホトウキ)」であることを石黒HPで知りました。故郷の石黒では「ゴウジ(うじ)ゴロシ」と呼んでいたようです。
 

昔の便所は、特に夏場などは板張りの床面に、白いウジ虫が這い上がって2,3匹もぞもぞと闊歩している姿は日常的に見慣れた光景でした。

また、当時は、石黒では便所を「センチ」と言い、床板を長方形に穴をあけた(切り抜いた)だけの便所も各家庭でみられた時代でしたから、乾燥させた「ゴウジころし」の葉っぱが便所にぶら下がっている家もありました。生活の知恵で臭い消しだったのでしょうか。ウジ虫も寄り付かない?

 あの強烈なゴウジコロシの臭いを思い浮かべると今でも嗅覚がとっさに目覚めるように思います。

(福島県在住)