参考資料

 

(前文略)ハエドクソウは「蠅毒草」。根にフロマロリンという毒性分を含み、根をすり潰し、この汁をご飯に混ぜて紙に塗り、蠅取り紙にした。中国では「毒蛆草」と呼び、蛆を殺すのに使った。毒草は適量を守れば素晴らしい薬草。漢方では「透骨草(とうこつそう)」といい、はれ物の治療、鎮痛、消炎などの薬効で知られる。

 
ハエドクソウの薬効には驚くが、生きた化石だと聞いてまたビックリだろう。現在ハエドクソウは、東アジア(日本、朝鮮、中国、ヒマラヤ、東シベリア)と北アメリカ東部に隔離分布している。第三紀に北極から中緯度地域に分布していた植物は、第四紀の氷期になると南下した。しかし、ヨーロッパではアルプス山脈て行く手を阻まれて絶滅した。低温化の影響の少なかった日本や、上手く南下出来たアジアや北アメリカの植物が不連続分布して現在生きている。こうした第三紀周極要素(第三紀周北極植物相)の子孫達が、ミズバショウ、エンレイソウ、フッキソウなどが北半球の温暖林に残存している植物たちだ。(文字色変更は抜粋者)

 古い特異な植物であることはその形態にも見ることが出来る。遠目で花茎を見るとシソ科の植物にそっくりだ。近づいて見るその小さな花はキツネノマゴに似た唇形。花茎の下部の軸に寝て付く種子はイノコズチそのもの。だがこれは他人の空似に過ぎない。日本のハエドクソウ(Phryma leptostachya ssp. asiatica)は、花が一回り大きな北アメリカ東部のアメリカハエドクソウ(ssp. leptostachya)を基準亜種に、1属1種だけのハエドクソウ科を名乗る特異な形態を持つ不思議な植物なのだ。

 ハエドクソウの花は花茎の下から上に咲き登って行く。頂部の蕾は上向き。開花すると花は横を向く。そして、花が終わり実になれば真下を向く。この幼虫はといえば、丁度開花中の花にいる。花を食べつくし、花を探して下から登って来たのだろうか? その直ぐ下の花を見ると、萼だけが残り花弁はすっかり無くなっている。幼虫が食べてしまったのだろうか。ハエドクソウは根ばかりでなく全草に毒を含むというから、この幼虫が本当に花を食べているとすれば驚きだ。(後文略)


二十四節気「自然ものがたり」
より抜粋掲載

http://homepage3.nifty.com/mushikusa/top/top_page_06.htm