田植え前の枠まわし
                           田辺雄司
 当時〔昭和のはじめ〕の田植えは、主に一本の縄を張り、それに合わせて7寸〔約22p〕か8寸ほどの間隔で目盛りをつけた長い竿を、両端のベテランの植え手が手で後に動かしながら目盛りに沿って植えたものでした。
 その後、枠を転がして枠の跡に植える方法が伝わってきて、どこの家でも長い枠と短い枠を大工に作ってもらい使いました。
 枠回しは田に一本の縄を張り、縄に沿って枠を前方、あるいは人によっては後方にまわして田に枠の跡をつけるのです。
田植え枠

 枠回しは、最初の出だしが肝心で縄に直角に当てないとだんだん隙間が出来てしまいます。とくに、2枠目、3枠目になると注意を集中して行わないと最後まで斜めに進むことになります。
 とくに、水を払うことの出来ない田〔天水田〕の枠回しは、ゆっくりと回すのですが、どうしても水が濁るため大変難しいものでした。ですから、2列目を回すときには濁った水が澄むまでしばらく待っていて、回したものです。
 また、短い枠は楽でしたが長い枠は両端がよく見えないので〔回すときは枠の中央で操作するため〕前回の枠跡に合わせることが難しく熟練を要しました。