大天井(オオソラ)
                          
 茅葺き屋の家は一部三階構造になっており、二階(ミンジョ・シモベエの上→昔の家の間取り参照)には一年中の囲炉裏や風呂釜の燃料となるワッツェボ(薪)、ボイ(柴)、杉の葉などぎっしりと積んでありました。三階には藁や家畜の飼にする干し草が山にして積み上げてありました。
茅葺き屋の上道具-この上が大天井

 大天井(屋根裏)にこれらの藁や刈草を上げるのも人手のいる仕事でした。藁は短いので2人では手渡しできないので中間にもう1人(中持ちする人)必要です。やむを得ず2人でやる時には棒の先に釘を打ち付けてそれで藁束を刺して差し出すというやり方もありましたが力が要るので時々休んでやったものです。
 藁上げは秋の涼しい時ですので良かったのですが、刈草上げは夏の暑い頃で、そのうえ細かい葉がパラハラと落ちるので大変な仕事でした。私の家では約1000束ほど上げましたので時間もかかりました。
 2階の燃料の薪やボイは稲刈りが始まる前に背負ったまま2階まで上がって順序よく積み上げました。これも半端な量ではなかったので階下の一階の戸の開閉がきつくなるほどでした。
 茅葺き屋は直径50pほどのブナ材(上道具と呼んだ)が二段にジョウヤ柱に組まれてホゾ差しで組まれていますので強固な構造でした。
 私の家は建ててから140年ほどですが屋根裏の床はスノコが敷いてあり長い年月の間にスノコの隙間をゴミがふさぎ囲炉裏の煙で固められたために階下にゴミが落ちるようなことはありませんでした。薪を上げておく二階も板張りの隙間も同様でした。 
 また、大天井(屋根裏)の藁の中で2斗ほど入る桶を背負って上がりドブロクを作ることもありました。その他、屋根裏は暖かいので納豆を藁の中にねかせて作ったりしました。
 冬など、時々屋根裏に藁や干し草を下ろしに上がることがありましたが時には囲炉裏の煙が充満して目が痛いこともありました。ハッポウと呼ぶ煙出しの穴の近くまで藁が積まれているためうまく煙も出ないためでした。干し草は1ヶ月に2回くらい下ろしてきて押し切りで一日中かかって3pほどの長さに切断しましたが根本から1mほどの堅い部分は燃料にしたり馬屋の下敷きにしたりしました。

 こうして、藁も干し草も春ともなれば使い尽くして大天井は空っぽ状態になり、二階の焚き物も半分くらいになってしまいます。山の雪消えを待って又、春木仕事が始まるのでした。

文・図-田辺雄司 
(石黒在住)