ベト敷き
                         田辺雄司
 当時(昭和30年年代まで)は、春になると1日も早く田の雪をとかすために、特に苗代には土をまいて雪解けを早めたものでした。
 また、古くからの田(どぶ田)で地力が失われた田には新しい土を運び入れて力をつけてやる必要がありました。地力の弱まった田で有機質の肥料だけで育てた稲は、茎が弱く倒れやすくなるからでした。
ハコモッコ

 土入れは箱モッコ(左写真)を使い土を一日中運び田の上の所々に山にしておき、雪が消えてから鍬で平均に広げました。こうして古田には毎年のように新土を敷き込んで地力の回復に努めていたのです。
 反対に、新田では窒素系の肥料が不足であるため石灰窒素を多少まくとか石灰窒素のない昔は、草木灰や人糞尿とかをまいて補っていたようです。
 また、田堀の時に田形が凹んでいる場所はおき出し(盛り土)といって土を盛っておき出しにして形を良くしたり、多少でも面積を増すようにしたものですが、そのときには次のような工夫をしました。
 まず、おき出しをするところに土を盛るときは70〜100pおきに長さ1mほどのボイ(低木−ソダ)を切って並べて土を盛り、またソダを並べて土を盛るというやり方て゛土を盛っていくのです。こうすると盛り土全般に力がかかり崩れにくくなるからです。それでも冬の雪の重みで、おき出し部分だけ毎年のように若干地面が下がって、そのままにしておくと田面(たづら)が傾いた状態になります。そのため、毎年さがった部分に沢山の土を引き込む必要が生じます。この仕事を怠ると、田の水を払っても一部に20〜30pの水がたまっている田になってしまいます。
 また、雪消しのための土は出来るだけ細かい土がよいのですが、下がった部分に入れる土は出来るだけごろごろした塊の土が適していました。
 春のベト運びでは田の近くに土を採る場所を決めて、まず除雪からしなければならないので大変でした。この仕事は前の日の夕方行いましたが2mほどの雪の横穴で、しかも、中で十分に鍬を使える広さが必要でしたので結構時間がかかる作業でした。春の雪は堅くしまっているためこのように手間取るのでした。

 このように昔から私たちの先祖が、モッコで大変な苦労して開発した田、それを代々にわたって汗水流して管理してきた田、その多くが今日(2012)、荒れ果てて原野に帰りつつある様は、実に見るに忍びないものがあります。