しょうゆのみ
                            
 昔はどこの家でもトウモロコシを栽培し
ました。ご飯の足しになることも考えて沢
山栽培したものと思われます。夏、畑に入
った子供が見えなくなるほどにトウモロコ
シが成長したころトウモロコシの実の先端
にイゴと呼んでいた細い毛が黒く枯れてき
ます。
 その頃になると子どもが言いつけられて
畑に行って7、8本取ってきて実を包んで
いる何枚もの皮をむき囲炉裏の灰の中に入
れて熱いホド(火床)の灰をかけておきます

 そして時々、トウモロコシを回して満遍
なく焼けるようにします。しばらくすると
「ブッ、ブッ」とトウモロコシの粒が破裂
する音がするのですぐに灰の中から取り出
して「フゥ、フゥ」と吹いて灰を落してか
ら一粒ずつ指でもぎ取って食べるのでした
。当時はトウモロコシにかぶりついて食べ
ると親に厳しく叱られたものでした。
 そして秋になると食べ残したトウモロコ
シは家の中にぶら下げておいて乾かし正月
近いころに一粒ずつもぎ取ってそれを囲炉
裏で煎り鍋の中で良く煎り、冷ましてから
小さいイス(石臼)で一度に投入穴から沢山
入れて大割りをした後大きな鍋で1分ほど
煮立てるのでした。
 そして一晩おいて熱が冷めてから麹(こ
うじ)と塩を混ぜてそのまま4、5日おく
と甘味のある美味しいしょうゆのみが出来
上がるのでした。大人はよく納豆に混ぜて
食べたりしていましたが私たち子供は白い
餅やご飯のおかずにして食べました。キビ
(トウモロコシ)の甘い味がしてとてもおい
しかったことを覚えています。

   文・田辺雄司(石黒在住)