ヌカガマ
                              田辺雄司
 ヌカガマが石黒に普及したのは終戦後間もない頃だったと思います。
 それまではモミガラは、毎年、秋には沢山でるのに、大した利用価値もありませんでした。囲炉裏に燃しても、始終ついていて火箸で火床の方へ押しやってやらなければならない。その他、畑の中に入れたり、芋を保存するときに使ったりしたが使う量はたかが知れている。大方は大した利用価値もないものとして屋外で燃したり棄てたりしていました。

 ところが、そのモミガラでご飯が炊ける釜ができたという話が伝わり村の重立衆が買って、その性能の良さが分かるとどこの家でも購入して使うようになりました。
 ヌカガマは、上図のように両端にヌカを入れる口がありそこからご飯の量によって小さなカナミ〔金箕〕でモミガラを入れるのでした。また、灰は自然に落ちるのではなく釜の下の方の目皿を左右に動かして落とすのでした。
 また、ヌカガマはモミガラを入れて着火すれば後は全然手を加えることなくご飯が炊きあがりました。そのご飯の美味しいことは子どもにもよくわかるほどでした。とくにお焦げの部分のご飯が美味しかったことを今でも時々思い出します。
 カマの蓋は軽いと煮立った時に動きますのでケヤキ板の厚いものを使いました。カマにも種類があり2升、3升、5升というように米の量によって形が大きくなりました。戦前には鉄製のカマが使われていましたが戦争で鐵が不足し一時、カマが壊れてもなかなか買えない時代がありましたが終戦後はアルミでできた軽いカマが出回ってきました。このアルミのカマは鐵のカマより厚くできていました。
 今日ではガスカマや電気ガマの時代となりましたが、ヌカガマで焚いた、あんなに美味しいご飯は今では食べられないと思っています。


追記
※編者の質問「1回の炊飯におよそどれくらいの量のモミガラを使ったか」についての著者の説明

 ヌカガマでの1回の炊飯に使うモミガラの量は正確には分かりませんが2升くらいの御飯であればおよそカナミ〔一斗缶を縦に切り分けて作った箕〕に2杯ほどでしょうか。
 もっと沢山の量の御飯を炊くときには釜の一番下についている灰落とし皿を左右に動かして小さなカナミ2杯ほど追加したものでした。