芋類・野菜の昔の保存法
                            田辺雄司
 霜の降る時候になりますと、サツマイモ、里芋などを掘り、天気の良い日には毎日庭先に傷つけないように並べて干すのでした。とくにサツマイモは干すほどに甘味を増すといわれる上に、干さないで入れると芋が汗をかくので必ず干してから穴に入れたものでした。
 どこの家でも囲炉裏の周りに「イモキャナ→芋置き穴」が掘ってあり、冬の間に腐らないようにモミガラを間にはさんで、上にもたくさんかぶせて保存するのでした。サツマイモは、幾日も干してもどうしても「いきれる」と言いますか汗をかくのでサツマイモの芋置き場だけは乾いたヨシを二握りほど束にして2ヶ所ほど立てて湿気抜けの通気口を作ってやりました。(下図参照)サツマイモの貯蔵穴の上の床板をはぐると通気口の所だけが湿気でぬれているのでした。
 私の家では、デイ(奥座敷)の床下にも縦7尺、横4尺、深さ5尺ほどの大きな貯蔵穴がありましたがヨシで作った通気口を数カ所作っておきました。もちろん乾燥屋敷と湿気屋敷では保存期間の長さが異なりますので湿気屋敷の家では種芋だけは乾燥屋敷の芋穴に宿を借りて貯蔵するのでした。
 また、芋置き穴はまわりをよくふさがないとネズミの害にあうことも多くありました。芋置き場の床板をはぐると白く見えるほど沢山の芋がネズミにかじられていることもあります。そういうときにはゴグラクオトシというワナでネズミを捕ったり、猫を入れたりしたものでした。
 また、大根の貯蔵は私の家では二階に6尺×4尺角に棒を立ててムシロで囲いモミガラを入れて、きれいに泥を落とした大根を無造作に入れ、その隙間にモミガラ入れて置きましたので滅多に腐るということはなく春まで保存できました。
 春に、余った大根は祖母が天気の良い日に雪の上にスダレを置きその上にムシロを敷いて、ゆでたばかりの切り大根をひろげて夕方まで干すのでした。
 また、大豆、小豆などは俵に入れて囲炉裏の近くの天井につり下げたり、土蔵の中で保存したりしていました。