保健婦助産婦看護婦法
保健婦助産婦看護婦法 (昭和二十三年七月三十日法律第二百三号) 昭和二十六年九月一日平成五年一一月一九日法律第九〇号
第一章 総則
第一条 この法律は、保健婦、助産婦及び看護婦の資質を向上し、もつて医療 及び公衆衛生の普及向上をはかるのを目的とする。
第二条 この法律において、「保健婦」とは、厚生大臣の免許を受けて、保健 婦の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする女子をいう。
第三条 この法律において、「助産婦」とは、厚生大臣の免許を受けて、助産 又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導をなすことを業とする女子 をいう。
第四条 削除 第五条 この法律において、「看護婦」とは、厚生大臣の免許を受けて、傷病 者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助をなすことを業
とする女子をいう。 第六条 この法律において、「准看護婦」とは、都道府県知事の免許を受けて、 医師、歯科医師又は看護婦の指示を受けて、前条に規定することをなすこ
とを業とする女子をいう。
第二章 免許
第七条 保健婦、助産婦又は看護婦になろうとする者は、保健婦国家試験、助 産婦国家試験又は看護婦国家試験に合格し、厚生大臣の免許を受けなけれ ばならない。
第八条 准看護婦になろうとする者は、准看護婦試験に合格し、都道府県知事 の免許を受けなければならない。
第九条 目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者には、前二条 の規定による免許(以下免許という。)を与えない。
第十条 左の各号の一に該当する者には、免許を与えないとことがある。 一 罰金以上の刑に処せられた者 二 前号に該当する者を除く外保健婦、助産婦、看護婦又は准看護婦の業務に
関し犯罪又は不正の行為があつた者 三 素行が著しく不良である者 四 精神病者、麻薬、大麻若しくはあへんの中毒者又は伝染性の疾病にかかつ ている者
第十一条 厚生省に、保健婦籍、助産婦籍及び看護婦籍を備え、保健婦免許、 助産婦免許及び看護婦免許に関する事項を登録する。
第十二条 都道府県に、准看護婦籍を備え、准看護婦免許に関する事項を登録 する。
第十三条 免許は、保健婦籍、助産婦籍若しくは看護婦籍又は准看護婦籍に登 録することによつて、これをなす。 2 厚生大臣又は都道府県知事は、免許を与えたときは、それぞれ保健婦免許
証、助産婦免許証若しくは看護婦免許証又は准看護婦免許証を交付する。
第十四条 保健婦、助産婦又は看護婦が、第九条の規定に該当するときは、厚 生大臣は、その免許を取り消す。
2 准看護婦が、第九条の規定に該当するときは、都道府県知事は、その免許 を取り消す。
3 保健婦、助産婦又は看護婦が、第十条各号の一に該当し、又は保健婦、助産婦又は看護婦としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生大
臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて業務の停止を命ずることができる。
4 准看護婦が、第十条各号の一に該当し、又は准看護婦としての品位を損するような行為のあつたときは、都道府県知事は、その免許を取り消し、又
は期間を定めて業務の停止を命ずることができる。
5 前二項の規定による取消処分を受けた者であつても、疾病がなおり、又は改しゆんの情が顕著であるときは、再免許を与えることができる。この場
合においては、第十三条の規定を準用する。
第十五条 厚生大臣は、前条第一項、第三項又は第五項に規定する処分をなす に当たつては、あらかじめ医療関係者審議会の意見を聞かなければならな い。
2 都道府県知事は、前条第二項、第四項又は第五項に規定する処分をなすに
当つては、あらかじめ准看護婦試験委員の意見を聞かなければならない。
3 厚生大臣は、前条第一項又は第三項の規定による免許の取消処分をしようとするときは、厚生大臣による聴聞に代えて、都道府県知事に、当該処分
に係る者に対する意見の聴取を行わせることができる。
4 行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章第二節(第二十五条、第二十六条及び第二十八条を除く。)の規定は、都道府県知事が前項の規定に
より意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において、同節中「聴聞」とあるのは「意見の聴取」と、同法第十五条第一項中「行政庁」
とあるのは「都道府県知事」と、同条第三項(同法第二十二条第三項において準用する場合を含む。)中「行政庁は」とあるのは「都道府県知事は」
と、「当該行政庁が」とあるのは「当該都道府県知事が」と、「当該行政庁の」とあるのは「当該都道府県の」と、同法第十六条第四項並びに第十
八条第一項及び第三項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と、同法第十九条第一項中「行政庁が指名する職員その他政令で定める者」とある
のは「都道府県知事が指名する職員」と、同法第二十条第一項、第二項及び第四項中「行政庁」とあるのは「都道府県」と、同条第六項、同法第二
十四条第三項及び第二十七条第一項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
5 厚生大臣は、都道府県知事から当該処分の原因となる事実を証する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には、速やか
にそれらを当該都道府県知事あて送付しなければならない。
6 都道府県知事は、第三項の規定により意見の聴取を行う場合において、第四項において読み替えて準用する行政手続法第二十四条第三項の規定によ
り同条第一項の調書及び同条第三項の報告書の提出を受けたときは、これらを保存するとともに、当該処分の決定についての意見を記載した意見書
を作成し、当該調書及び報告書の写しを添えて厚生大臣に提出しなければならない。
7 厚生大臣は、意見の聴取の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、前項の規定により提出された意見書を
返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう指示することができる。行政手続法第二十二条第二項本文及び第三項の規定は、この場合について 準用する。
8 厚生大臣は、当該処分の決定をするときは、第六項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌してこれをしなけ ればならない。
9 厚生大臣は、前条第三項の規定による業務の停止の命令をしようとすると きは、厚生大臣による弁明の機会の付与に代えて、都道府県知事に、当該
処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。
10 前項の規定により弁明の聴取を行う場合において、都道府県知事は、弁
明の聴取を行うべき日時までに相当な期間をおいて、当該処分に係る者に 対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 前条第三項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容 二 当該処分の原因となる事実 三 弁明の聴取の日時及び場所
11 厚生大臣は、第九項に規定する場合のほか、厚生大臣による弁明の機会 の付与に代えて、医療関係者審議会の委員に、当該処分に係る者に対する
弁明の聴取を行わせることができる。この場合においては、前項中「前項」 とあるのは「次項」と、「都道府県知事」とあるのは「厚生大臣」と読み
替えて、同項の規定を適用する。
12 第十項(前項後段の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の通
知を受けた者は、代理人を出頭させ、かつ、証拠書類又は証拠物を提出す
ることができる。
13 都道府県知事又は医療関係者審議会の委員は、第九項又は第十一項前段の規定により弁明の聴取を行つたときは、聴取書を作り、これを保存する
とともに、当該処分の決定についての意見を記載した報告書を作成し、厚生大臣に提出しなければならない。
14 厚生大臣は、第三項又は第九項の規定により都道府県知事が意見の聴取又は弁明の聴取を行う場合においては、都道府県知事に対し、あらかじめ、
次に掲げる事項を通知しなければならない。一 当該処分に係る者の氏名及び住所 二 当該処分の内容及び根拠となる条項三 当該処分の原因となる事実
15 第三項の規定により意見の聴取を行う場合における第四項において読み替えて準用する行政手続法第十五条第一項の通知又は第九項の規定により
弁明の聴取を行う場合における第十項の通知は、それぞれ、前項の規定により通知された内容に基づいたものでなければならない。
16 都道府県知事は、前条第四項の規定による業務の停止の命令をしようと するときは、都道府県知事による弁明の機会の付与に代えて、准看護婦試
験委員に、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。
17 第十項、第十二項及び第十三項の規定は、准看護婦試験委員が前項の規
定により弁明の聴取を行う場合について準用する。この場合において、第 十項中「前項」とあるのは「第十六項」、「前条第三項」とあるのは「前
条第四項」と、第十二項中「第十項(前項後段の規定により読み替えて適 用する場合を含む。)」とあるのは「第十七項において準用する第十項」
と、第十三項中「都道府県知事又は医療関係者審議会の委員」とあるのは 「准看護婦試験委員」と、「第九項又は第十一項前段」とあるのは「第十
六項」と、「厚生大臣」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものと
する。
18 第三項若しくは第九項の規定により都道府県知事が意見の聴取若しくは弁明の聴取を行う場合、第十一項前段の規定により医療関係者審議会の委
員が弁明の聴取を行う場合又は第十六項の規定により准看護婦試験委員が弁明の聴取を行う場合における当該処分については、行政手続法第三章
(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。
第十六条 この章に規定するものの外、免許の申請、保健婦籍、助産婦籍、看 護婦籍及び准看護婦籍の登録、訂正及び抹消、免許証の交付、書換交付、 再交付、返納及び提出並びに住所の届出に関しては、政令でこれを定める。
第三章 試験
第十七条 保健婦国家試験、助産婦国家試験、看護婦国家試験又は准看護婦試 験は、それぞれ保健婦、助産婦、看護婦又は准看護婦として必要な知識及 び技能について、これを行う。
第十八条 保健婦国家試験、助産婦国家試験及び看護婦国家試験は、厚生大臣 が、准看護婦試験は、都道府県知事が、毎年少くとも一回これを行う。
第十九条 保健婦国家試験は、看護婦国家試験に合格した者又は第二十一条各 号の一に該当する者であつて、さらに左の各号の一に該当するものでなけ れば、これを受けることができない。
一 文部大臣の指定した学校において六月以上保健婦になるのに必要な学科を 修めた者 二 厚生大臣の指定した保健婦養成所を卒業した者 三 外国の保健婦学校を卒業し、又は外国において保健婦免許を得た者で、厚
生大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたも の
第二十条 助産婦国家試験は、看護婦国家試験に合格した者又は第二十一条各 号の一に該当する者であつて、さらに左の各号の一に該当するものでなけ れば、これを受けることができない。
一 文部大臣が指定した学校において六月以上助産に関する学科を修めた者 二 厚生大臣の指定した助産婦養成所を卒業した者 三 外国の助産婦学校を卒業し、又は外国において助産婦免許を得た者で、厚
生大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたも の
第二十一条 看護婦国家試験は、左の各号の一に該当する者でなければ、これ を受けることができない。 一 文部大臣の指定した学校において三年以上看護婦になるのに必要な学科を
修めた者 二 厚生大臣の指定した看護婦養成所を卒業した者 三 免許を得た後三年以上業務に従事している准看護婦又は高等学校を卒業し ている准看護婦で前二号に規定する学校又は養成所において二年以上修業
したもの 四 外国の看護婦学校を卒業し、又は外国において看護婦免許を得た者で、厚 生大臣が第一号又は第二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有する
と認めたもの
第二十二条 准看護婦試験は、左の各号の一に該当する者でなければ、これを 受けることができない。 一 文部大臣の指定した学校において二年の看護に関する学科を修めた者
二 厚生大臣の定める基準に従い、都道府県知事の指定した准看護婦養成所を 卒業した者 三 前条第一号、第二号又は第四号に該当する者 四 外国の看護婦学校を卒業し、又は外国において看護婦免許を得た者のうち、
前条第四号に該当しない者で、厚生大臣の定める基準に従い、都道府県知 事が適当と認めたもの
第二十三条 保健婦国家試験、助産婦国家試験及び看護婦国家試験の実施に関 する事務をつかさどらせるため、厚生省に保健婦助産婦看護婦試験委員を 置く。
2 保健婦助産婦看護婦試験委員に関し必要な事項は、政令で定める。
第二十四条 削除
第二十五条 准看護婦試験の実施に関する事務をつかさどらせるために、都道 府県に准看護婦試験委員を置く。 2 准看護婦試験委員に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。
第二十六条 厚生大臣は、都道府県知事に対し、准看護婦試験の実施について 必要な事項を指示し、又は保健婦助産婦看護婦試験委員に、准看護婦試験 の基準に関して、准看護婦試験委員を指導させることができる。
2 厚生大臣は、前項の規定による指示をなし、又は指導をさせる場合は、医 療関係者審議会の意見をきかなければならない。
第二十七条 保健婦助産婦看護婦試験委員、准看護婦試験委員その他保健婦国 家試験、助産婦国家試験、看護婦国家試験又は准看護婦試験の実施に関す る事務をつかさどる者は、その事務の施行に当たつては厳正を保持し、不
正の行為のないようにしなければならない。
第二十八条 この章に規定するものの外、保健婦国家試験、助産婦国家試験、 看護婦国家試験又は准看護婦試験の試験科目、受験手続その他試験に関し て必要な事項及び第十九条から第二十二条までの規定による学校の指定又
は養成所に関して必要な事項は、省令でこれを定める。
第四章 業務
第二十九条 保健婦でなければ、保健婦又はこれに類似する名称を用いて、第 二条に規定する業をしてはならない。
第三十条 助産婦でなければ、第三条に規定する業をしてはならない。但し、 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)の規定に基いてなす場合は、この 限りでない。
第三十一条 看護婦でなければ、第五条に規定する業をしてはならない。但し、 医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基いてな
す場合は、この限りでない。 2 保健婦及び助産婦は、前項の規定にかかわらず、第五条に規定する業をな すことができる。
第三十二条 准看護婦でなければ、第六条に規定する業をしてはならない。但 し、医師法又は歯科医師法の規定に基いてなす場合は、この限りでない。
第三十三条 業務に従事する保健婦、助産婦、看護婦又は准看護婦は、省令で 定める二年ごとの年の十二月三十一日現在における氏名、住所その他省令 で定める事項を、当該年の翌年一月十五日までに、その就業地の都道府県
知事に届け出なければならない。
第三十四条 削除
第三十五条 保健婦は、傷病者の療養上の指導を行うに当つて主治の医師又は 歯科医師があるときは、その指示を受けなければならない。
第三十六条 保健婦は、その業務に関して就業地を管轄する保健所の長の指示 を受けたときは、これに従わなければならない。但し、前条の規定の適用 を妨げない。
第三十七条 保健婦、助産婦、看護婦又は准看護婦は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合の外、診療機械を使用し、医薬品を授与し、又は医
薬品について指示をなしその他医師若しくは歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずる虞のある行為をしてはならない。但し、臨時応急の手
当をなし、又は助産婦がへそのおを切り、かん腸を施し、その他助産婦の業務に当然附随する行為をなすことは差支ない。
第三十八条 助産婦は、妊婦、産婦、じよく婦、胎児又は新生児に異常がある と認めたときは、医師の診療を請わしめることを要し、自らこれらの者に 対して処置をしてはならない。但し、臨時応急の手当は、この限りでない。
第三十九条 業務に従事する助産婦は、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生 児の保健指導の求があつた場合は、正当な事由がなければ、これを拒んで はならない。
2 分娩の介助又は死胎の検案をした助産婦は、出生証明書、死産証書又は死 胎検案書の交付の求があつた場合は、正当の事由がなければ、これを拒ん ではならない。
第四十条 助産婦は、自ら分娩の介助又は死胎の検案をしないで、出生証明書、 死産証書又は死胎検案書を交付してはならない。
第四十一条 助産婦は、妊娠四月以上の死産児を検案して異常があると認めた ときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない。
第四十二条 助産婦が分娩の介助をしたときは、助産に関する事項を遅滞なく 助産録に記載しなければならない。 2 前項の助産録であつて病院、診療所又は助産所に勤務する助産婦のなした
助産に関するものは、その病院、診療所又は助産所の管理者において、そ の他の助産に関するものは、その助産婦において五年間これを保存しなけ ればならない。
3 第一項の規定による助産録の記載事項に関しては、省令でこれを定める。
第五章 罰則
第四十三条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円 以下の罰金に処する。一 第二十九条から第三十二条までの規定に違反した者
二 虚偽又は不正の事実に基いて免許を受けた者2 前項第一号の罪を犯した者が、助産婦、看護婦、准看護婦又はこれに類似した名称を用いたものであるときは、これを二年以下の懲役又は二万円以
下の罰金に処する。
第四十四条 左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は五千円 以下の罰金に処する。 一 業務停止中の保健婦助産婦、看護婦又は准看護婦であつて、その業務をな
したもの 二 第三十五条から第三十八条までの規定に違反した者 三 第二十七条の規定に違反して故意若しくは重大な過失により事前に試験問 題を漏らし、又は故意に不正の採点をした者
第四十五条 第三十三条又は第四十条から第四十二条までの規定に違反した者 は、これを五千円以下の罰金に処する。
|