雪流しトヨを使った除雪の思い出
                            田辺雄司 
 昭和30年(1955)頃から、除雪のための色々な道具が現れ以前に比べて楽になりました。
 中でも雪流しトヨは便利なものでした。杉板製で長さ4m、幅40pほどのもので、それを数枚つなげると遠くまで面白いように滑らせることができるのでした。
 とはいえ、家の周りに崖のない家では十分にその性能を発揮させることはできません。幸い、私の家は北側が急な崖となっているため、そこまで雪を流すにはトヨを7枚ほどつないで使いました。ある程度のカーブも2枚にわたってカーブを緩くしてやれば平気でした。口元ではスノーダンプを使ってかなり大きな雪の固まりを流すのでしたが問題はありませんでした。
 ただし、トヨは購入したときに内側全体にパラフィン〔ローソクなど〕を熱したコテでまんべんなく塗る必要がありました。底板は広いので古いアイロンを使ってあらかじめ砕いたパラフィンを撒いておいて塗ったこともありました。 トヨを使うには、まず除雪を始める前にその日に除雪する場所を基点にして1枚ずつトヨを並べてふせる必要があります。これに少し時間はかがりますが、スノーダンプでは10m以上押して歩かなければならないところでもトヨを使うとその基点まで運べばいいのでから何倍も能率が上がります。しかし、朝の準備はともかく、夕方の後かたづけは一枚ずつ軒下まで運んでおく作業は大変でした。板製の除雪トヨは重量もあり、疲れた体で7枚も足場の悪い雪上を運ぶのは思いの外重労働でした。
 その後、ビニル製の波型板が店頭に並ぶようになり、それを使いました。こちらは軽くその上パラフィンを塗る必要もありません。長さも、6尺と9尺がありました。いうまでもなく、これを並べておくだけではビニル板そのものが動いてしまいますので各々のビニル板の一方の両端に穴を開けてヒモを通してその先に20pほどの棒を結わえてそれを雪の中に埋めて止め具にしました。その他、波型板をおくところは凹みにして置くようにしました。
 ビニル板は軽いので土蔵の屋根の雪下ろしにも使いましたが、スコップで掘る何倍もの能率があがったものでした。


文・図 田辺雄司 (居谷在住)