冬の馬屋の掃除
                           田辺雄司
 冬の馬屋の掃除は大変でした。天気のよい日を選んで、前の日に雪を掘って馬屋の中の敷きワラを引き出すための道と積み場を作らなければなりません。父は、ヤマノノコを着て肩をはずして(汗をかかないため)雪掘りをしました。
 道ができて馬屋の敷き藁を引き出すときには、オカウマヤ(岡馬屋)と言ってトマグチ(土間口)の入り口から入ったところの縁板を3坪ばかりはずしてそこへ馬を引き出していれました。静かにしているように桶に餌をいれて与えておきました。
ウマゴエアゲカギ

 私たちは、板張りのニワに馬がいるため、その日は学校から家に帰ると雪だなの上に上がって二階に入りそこから一階に下りて座敷に行ったものでした。
 父の作業を見ていると、ウマゴエアゲカギで敷き藁を引き出すときには、敷きワラを手でよくふるって馬の糞とワラを分けていました。
 そして、糞は外便所の六尺モン(形180pほどの肥だめ桶)入れていました。そして、敷き藁はウマゴエアゲカギて引っ張って馬屋の外につくった雪道を通って積む場所まで運んでいました。この作業は手間がかかりました。それが終わると馬屋の地下に埋められている小便貯め桶の小便を長い柄のシャクで汲み取り馬の糞を入れた桶に移すのでした。
 こうしてやっと夕方近くになって馬屋の掃除は終わります。新しい敷き藁を平らに敷いてそこに馬を引き入れると、馬は、しばらくぶりで乾いた敷き藁や干し草を入れてもらったので喜んでいるように見えました。寝ころんで背中を敷き藁にこするような動作をしたりしていたものでした。