落とし板 田辺雄司 冬期になりますと窓を雪から守るためにどこの家でもガタガタと6尺(約180p)の柱と柱の間に幅1尺(30p)前後の板をはめるのでした。 両方の柱には溝が上から土台石まで溝が掘ってありました。この落とし板が雪が積もるたびに1枚ずつ重ね真冬になるとあちこちのまどは落とし板で昼間でも薄暗くなるのでした。 ![]() 降雪となり屋根の雪下ろしが終わりますと外の明りなどはほんのわずか高い窓から入るばかりで屋根の軒先までカンジキを履いて雪掘りと雪片付けが始まるのですが、自分の背よりも高い雪を思い切り遠くまで投げるのが大変でした。 しかし、昔の家はどこの家も窓は2か所か3か所くらいしかありませんでした。雪が降りやみ春めいてくると、一番初めは雁木の前の雪片付けで深くか掘り下げてようやく落とし板を1枚ほど一時的にはずすとその明るさは全く夜が明けたようでした。 落とし板には幅の広い板、狭い板などあり長年使用しているため古い物は割れたり欠けたり孔があいたりしていますが板の間に隙間が生じますとその間からアラレがコロコロと入りたちまちいっぱいになることもありました。 やがて真冬ともなりますと、かんじきを履いて屋根に上りコイスキで1mほど積もった雪を落としますので全部の窓がふさがって家の中は日中でも夜同然の有様でした。 しかし、時代が進むにつれて障子張りの窓はガラス戸となり窓もまどりを広くとるようになりました。 除雪の道具も四角いシャベルなどが普及してコイスキの何倍も能率が上がり、家の中もそれだけ明るさを取り戻すことができました。 そして、電気が村にひかれて電灯がつくと勿体ないといいながらも日中でもごく暗いときには電灯をつけていました |