入浴についての昔の暮らし

 昔(昭和の初期)までは、石黒では入浴時に風呂の中で体を洗う習慣でした。これは、水と燃料の焚き木を節約するためで、現在のように洗い水を汲み出して使うことは考えられないことでした。
 その上、渇水期には水を替えずにそのまま翌日も使う「立て替えし」も珍しくありませんでした。十人以上の家族が入ったあとですからまったく汚い。
 湯が少なくなり風呂桶の中にある釜(火を燃やす金属の部分)が出ると釜が傷むので手桶で水を足すくらいで、水を足しても薪がもったいないというので、特に火はもさないのでだんだんぬるくなるのでした。
 また、風呂で使う手ぬぐいは一人ひとりが持つことはなく、「湯じらす」と呼んで、母が着古した着物の丈夫なところだけを切り取り三枚ほど合わせて、いく通りにも縦に縫ったタオルほどの大きさのものを家族全員で一枚のものを使っていました。私たち子どもには硬い感触で体を拭くと痛かったことを覚えています。
 しかし、お客さんやお寺の住職が泊まられたときには新しい手ぬぐいを用意して使ってもらいました。
 今日では、想像もできないほど不便で不衛生なことでした。それに比べ、今では、自動で風呂の水位を保ち、シャワーからお湯が出て自由に使えるなど、ほんとうに便利で豊かな暮らしになったものです。
             田辺雄司 (石黒・居谷在住)