民具補説
              造りつけのコタツの炉
 先の新潟沖地震の被害で築百年の茅葺屋の我が家も被害を受けました。昔の工法は土台石のうえに柱を据えて建ててあるため地震によって柱がずれてしまったのでした。石黒ではこのような被害が多くありました。
 それで、今年〔2009〕の秋、大工さんを頼んで修理をしたのでしたが、その折りに座敷の床板をはぐったところ造りつけのコタツの炉が現れ初めてよく観察できました。
 形は下図のようなもので、この炉は石黒の山からでる石、「タキノフチ石」〔※石黒層−凝灰質砂岩〕で造ったものだと思いますが縦横50p高さ30ほどの石でその中央に縦横25pほど、深さ15p余りの穴が掘ってあります。石ノミで叩いて根気よく掘った跡がありました。
 百年以上にわたって我が家で使われ、私たちを冬の厳しい寒さから守ってくれたと思うと有り難い気持ちが自然と湧きました。粗末にはできないと取り外して保存しておいたところ、長男が先日やって来て記念に欲しいと言って持ち帰りました。
 昔は、囲炉裏に十能という長い木の柄のついた鉄製のちりとりのようなものがあり、それでオキ〔赤く起こった炭火〕を運んできてコタツの炉の中に入れたものでした。
 そのコタツも、時代の変化にともない昭和30年代になると豆炭コタツに変わり、更に電気コタツに変わって、現在では炭火のコタツは姿を消してしまいました。


 文・図 田辺雄司〔居谷〕