正月用の飼いウサギ

                         

 めったに肉が食べられなかった頃〔昭和30年以前〕、ほとんどの家ではウサギを飼っていました、ペットではなく正月の食肉用として飼っていました。餌は、主に野の草を食べさせましたが秋ごろからは正月に備えてマメギ(豆の殻)や芋類や穀物などを食べさせて一生懸命肥やしたものです。
 隣村には冬になると猟をする人が居て、暮れになるとその人に前もって頼んでおいて飼いウサギを締めて丸裸にしてもらいました。その時、毛皮は手間代(謝礼)となりました。まだ冷蔵庫のない時代でしたから皮を剥いたウサギはそのまま台所の天井に吊るしておいて食べる分だけ切り取って食べました。
 最後の骨は雑煮やスマシ汁の出しに使いましたが鍋から引き上げた骨をしゃぶるのが楽しみで、あまり丁寧にこそがないで少し肉を骨に残しておいたものです。
 こうして肉を食べるのはお正月くらいでしたが、卵を産まなくなったニワトリを食べるときもありました、古いニワトリは肉も硬く肉付きも良くありませんでしたが、内蔵の卵黄が美味しかったのと首の所に意外と肉が付いていて真っ先に首の骨にしゃぶりついたのを憶えています。
 今、飼いウサギを自分の手で裁いて食べる気にはなれませんが当時は食べる為にどこの家でもウサギを飼っていたものでした。

  大橋洋子 (福島在住)