民具補説
          牛馬の口につけるフグ
 この民具は、秋に稲を馬や牛の背につけて運ぶときに使われた物です。稲の運搬時に馬や牛が首を後ろに伸ばして背につけた稲穂を口で引き抜いて食べることを防ぐ用具でした。
 フグは、縄製のものの他に竹製のものやツル製のものなどもありました。縄製のものは、堅く細く丈夫に綯った縄で袋状の物を編んで、2本の止め縄をつけて牛馬の耳の後ろ側に回して結んで止めておくのでした。→下図参照

 フグをつけていると水だけは飲めますが、道ばたの草を食べることもできません。馬や牛にとっては、とてもいやな道具であったでしょう。
 夕方仕事を終えて手綱をつけるクツワ(口輪)やフグを外して馬屋に入れると満足げに仰向けになって背中を敷きワラにこすりつけるなどして元気な声でいなないて餌をくれるのを待っていたものです。

              文・図 田辺雄司 (居谷)