民具補説 チョウナ 私の家の本家は、あまり大きな家ではありませんでしたが昔造りの曲がり屋でした。幼い頃はよく遊びに行き、学校に入ってからも正月前の大掃除のときなどはその家へお昼を食べに行ったものでした。 その時に、珍しく思ったのは、その家の柱などの表面が他の家のように平らではなく凸凹していることでした。 それで、ある時に、「どうして、ここの家の柱は凸凹なんだえ」とたずねるとそこの家の人は「昔の家だからなぁ、こういう家をチョウナ造りと言うんだよ」と教えてくれたことを今でも憶えています。
居谷の村中18軒のうち、チョウナ造りの家は私の家の本家ただ一軒でした。その家は部落の総本家の分家でしたが、その家がチョウナ造りであったことが不思議に思われましたが、後で話を聞きますと当時、資金面で困難があったためだとのことでした。 私たちが子どもの頃、家を建てるところを見に行くとハリやケタなどを2、3人の大工さんが調子を合わせてカンカンとチョウナで材木を削っているのでした。材木の場所によって削らなくてもよい場所に来ても、やはりカンカンと材料を叩いて調子を合わせておいて、削る場所まで移動する様子がとても面白く感じたものでした。 しかし、チョウナ使いは刃を自分の足の方に向けて削るために注意を要する危険な仕事でした。子供心にも見ていてそのことがよく分かりました。 また、家の用材は、まず、ヨキと呼ぶ道具でチョウナ削りの前に荒削りをしました。まず、ヨキで叩き割るようにして要らない所を取り除くのでした。その後に仕上げの段階でチョウナを使うという順序で用材を製品に仕上げたのでした。 ヨキは、その他、木を切り倒すときや薪を割るときにも使いました。昔はどこの家にもヨキとマサカリはあったものでした。 文・図 田辺雄司(居谷) |