民具補説 スミツボ 大工や木挽き職人には無くてはならない道具のひとつにスミツボがあります。 スミツボは硬い木をくりぬき、そこに墨をしみこませた綿を入れてその中を細い丈夫な糸(壷糸)を通して糸の一方は滑車に巻いてもう一方は反対側の穴を通してその先には留め具がついています。 材木や板に線を引くときには糸の先についた細い釘のような止め具(かるこ)を所定の場所(線の始点)に突き刺して糸を固定します。そしてサシ(図参照)で綿を押さえながら(糸によく墨をふくませるため)スミツボを持って移動して糸をズルズルと引き出して線の終点位置に糸を指で固定します。そしてもう一方の手の二本の指で糸を少し持ち上げて瞬間的に離すと真っすくな線が鮮やかにつきます。線を引き終わるとスミツボについた小さな滑車に糸をハンドル(取っ手)で巻き取るのでした。 スミツボは定規などでは引けない長い線も簡単に引ける便利な道具でした。 木挽きが木材を挽くときにはスミツボで挽いた線に沿ってノコギリで切断したりヨキ(マサカリに似た道具)などで削り落とします。
周囲6尺(約180p)長さ6尺の丸太から、4分(ぶ)板(1分は約3o)、6分板、8分板等をノコギリで挽いて作るには丸太の前の断面から丸太の前面、手前の断面に丁寧に墨糸の跡をつけてから丸太を挽きはじめるのでした。 文・図 田辺雄司(居谷) |