民具補説 背負い桶 背負い桶には2種類あり、一つは作物の肥料にする人糞を入れて運ぶためのものでありました。 昭和20年代までは人糞は稲作に使ったり、野菜作りに使いました。畑に使うときには囲炉裏で出た灰と混ぜて元肥(植え付け時にする肥料)や追肥(成長の途中でする肥料)にと使いました。 人糞を背負い桶で運ぶ時には桶に人糞を汲み入れ、フタの隙間から人糞が漏れることを防ぐために灰を入れておくのでした。 もう一つの背負い桶は尿や生活用水を運ぶもので、桶のフタの部分は取り外しのできないように板がはってあり、その中心より端の方に丸い穴があり、栓をして運ぶものでした。 もちろん、尿を運ぶものと、夏の渇水時期に飲料水やふろの水を運ぶものは別のものが備えてありました。尿や水を入れて運ぶ時には桶に空間があると中の水が前後に揺れて歩きにくいので他の背負い桶に比べて少し小型にできていました。 俗にこれを「小便だる」とか「肥やし桶」などと呼んでいました。 野菜などに施すときには、いったん手桶(テケ)に移してから少し水で薄めて柄杓(ひしゃく)で野菜の根元にまきました。 これら2種類の背負い桶の形や寸法は下図のようなものでした。 文・図 田辺雄司 (居谷) |