石油ランプのホヤ磨きの思い出

田 辺 雄 司

石油ランプのホヤ掃除は子どもの受け持ち仕事でした。学校から帰ると、お腹がすいているのでご飯に冷たいお汁をかけて食べてから、必ずランプ掃除をしました。
 ランプのホヤの元の口径が大人の手は入らないほどの大きさであったため、どこの家でもランプ磨きは子どもの仕事だったのです。
 
布切れで拭くのですが、今のように洗剤があるわけではありませんので石油のススはなかなか落ちません。
 もともと石油ランプは5分芯にして火をともしておけばそれほどススが出ないのですが、石油を倹約するために3分芯にして灯すので一層煙が出るのでした。ガラスのホヤの内側はねばねばしたススがついていました。
 当時は何でも節約第一の時代で、とくに石油は貴重品であるとともに危険物でありその管理にも気を配りました。私の家では、土蔵の中に一斗缶で貯蔵しておいて、ビール瓶ほどの瓶に小出しにして使っていました。今のように吸い上げポンプがあるわけではないので一斗缶の上の隅に釘で穴を開けて慎重に瓶に移して使いました。その瓶も危ないということで外便所の中に置いていました。ランプの石油がなくなると父がその瓶を持ってきて石油を注いだものです。石油ランプは御飯茶碗一杯ほどの石油が入りましたが、それで一晩はもちました。
 一斗缶の石油がなくなると松代まで行って買ってくるのでしたが、そのときに買ってきてもらう飴玉がおいしかったことを今でも忘れません。

 また、石油ランプで思い出すのは、暗いランプの下で母や祖母から聞いた昔話のことです。祖母は暗い石油ランプの下で、苧を爪で細かく割いて口でぬらしながらつないでオオケの中に入れる作業をしながら、よく昔話を語ってくれたものでした。