民具補説
                になわ(荷縄)
 荷縄は重いものを背負う時に使用するため丈夫であることが何より大切です。
 そのため綯(な)う時には、最良の藁を選び出して藁すぐり(藁の下葉を取り除く作業)を丁寧に行いました。大体、稲束3把が1把にするのが普通でした。 私も小さい頃から父の荷縄づくりを見ていました。当時は父が荷縄づくりを始める頃は、待ってる春の気配が少しする頃でした。それまでに、俵、さんだわら(俵の蓋)、蓑(みの)などを作り終わり、最後に荷縄ない等の細かな仕事を残しておくのでした。
 作業の工程は、まず選りすぐった藁をまんべんなく、丁寧に叩いて柔らかくすることでした。
 人により綯い始めの場所は異なっていましたが、すべて左綯いで3本縒りでした。左綯いは右綯いに比べしっかりと固く締まった縄ができるのでした。藁縄は濡れると強度が著しく低下しますが、左綯いで3本縒りにすることによって固く締まり水が染みこみにくい縄ができるのです。
 しかし、左綯いは右綯いに比べて平手が痛くなる作業でした。右綯い比べ力が入るせいか、単に慣れないということかその原因は分かりません。
 荷縄は長さ5m余で縄の中央が太くなっていました。この中央部分が稲束などを背負う時には首にかける場所です。ここに荷縄の両端を通して両方に引き絞めるために摩擦ですり切れ易い場所であるために太くしてあるのです。さらに強度を増すため、そこにカラムシの皮(オと呼んでいた)を混ぜて綯うのでした。
 荷縄はほとんど一年中使用する民具であり、どこの家の土間口にも蓑などと一緒に下げてありました。子供用の短い荷縄のある家もありました。
            文・図 田辺雄司 (居谷在住)