民具補説
                    くけ台
 くけ台は、昔の女性の嫁入り道具には欠かせない裁縫用具でありました。
 着物を縫う、あるいは繕うときには、くけ台の台座の部分の上に座って固定し、一方の折りたたみの出来る棒状の部分を真っ直ぐに立てます。そして先端についた針がさびないように米糠を入れた袋状の針刺しには使う針を刺しておきました。
 また、使用した後はその針はすべて抜き取り裁縫箱の中に収納しておきました。

 私が子どもの頃は、雨の日など昼間に母が家で繕い物をしていると珍しく何かうれしくて、繕い物をしている母や祖母の回りを駆け回ったものでした。そんなときには邪魔になると祖母にくけ台で叩かれたこともありました。その時の叩かれた向こうずねの痛さを今でも懐かしく思い出されます。
 昭和の中頃から、物の豊かな世の中となり、使い捨ての時代となると繕い物をする人もだんだん少なくなりくけ台も出番がなくなり姿を消してしまいました。
 今ではくけ台など知らない人が多いのではないかと思います。
 文・図 田辺雄司 (居谷在住)