ノコギリとその用途
 昔は、木挽き職人と呼ばれる人が各集落に数人いて、大型のノコギリを背負って来て、大きな杉の丸太を板に挽き分けるのでした。子どもの頃は興味を持ってその様子を見物したものです。
 木挽きのノコギリも用途によって色々な名前のノコギリがありました。前挽き(縦挽き)、手曲がりノコギリ、山ノコギリ、両刃ノコギリ、改良ノコギリ(昭和37年頃普及)などです。

ノコギリの種類

 一般の家庭では山ノコギリを春木(春に山の低木を燃料にするために切り出す作業)をはじめ枝払いなどに使っていました。また、両刃ノコギリも、どこの家庭にもあり一寸した板などを切るときに使用していました。今日でも使われている最も一般出来なノコギリです。
 昔は、ノコギリを使っていると、だんだん切れ味が悪くなるので時々、木挽き職人の所へ持っていって目立てをしてもらうのでした。また、無理な使い方をしてノコギリの平面(腰)を凸凹にした場合は、松代町まで行って機械にかけて平らにしてもらっていました。
 また、ヤスリで目(刃の部分)を研ぐことを「目立て」と呼んでいました。子どもの頃に木挽き職人が目立てをする様子をよく見物したものでした。
 目立ては歯一枚ずつ交互に角度が異なるのでその角度を誤りますと真っすくに切ることが出来ず左右にまがるので素人には難しい作業でした。私も大人になってから目立てをしてみてその難しさと苦労が分かりました。歯は一枚ごとに交互にヤスリで削るので時間もかかりました。
 また、木の質により柔らな木と堅い木によって歯の先端も変わります。柔らかな木を切断する場合は先端の歯のヤスリのかけ方も角度を急にし(切刃・切込角度ともに鋭角にし)、堅い木は角度を平らに近く(鈍角)します。
ノコギリの歯のつくりとアサリについて

 その他、柔らかな木は短い毛のようなものが挽いた跡に出てくるので歯の間を開きます(直線並びの歯を左右に開く)。これを「アサリを出す」と呼び、小さな金床の上で歯を一枚ずつ交互に専用の小さな金槌でコンコンと根気よく叩く根気の要る仕事です。
 とくに前挽き(縦挽き)ノコギリで薄い板を挽く場合は深長にヤスリをかけ、アサリを出すときには一層注意を要するのでした。
 ちなみに、堅い材質の木にはケヤキ、ブナ、イタヤ、モミジ、タモなどがあり、柔らかな材質としてはクルミ、シナノキ、スギ、キリ、ナラ(ナラは堅い材質のようですがノコギリで挽くと細かい毛が断面に出る)等があります。
最後に丸太から板を採る作業について図解してみました。


                文・図 田辺雄司(居谷)