民具補説
                カラカサ
 カラカサは昭和20年代までは、コウモリに比べて価格は安かったのですが、石黒ではどこの家にもあるというものではありませんでした。
 カラカサは、私の家では祖父が時々出かけるときに使う程度で身なりを整えて出かけるようなときにはコウモリを使っていました。 カラカサは厚手の生紙に油を塗って貼り付けたものであり、子ども向けの雨具ではありませんでした。少し乱暴に扱うと油紙が破れて穴が空きそれがだんだん大きくなって使い物にならなくなってしまいます。それでも学校に行くと先生や生徒の何人かが持っていたものでした。
 また、カラカサは別名「ばんがさ-番傘」とも呼び修学旅行などで旅館などに泊まると玄関に何本も下がっていたものでした。人に貸せるために番号を記したことから「番傘」の名前がついたとのことです、
 カラカサの構造は全部竹で出来ていて。柄の部分も油紙を貼る骨の部分も細く削った竹を割って削って作られていました。
 今でも忘れられないのは、壊れたカラカサの利用です。骨の部分は、ばらしてきれいに油紙を取り去って先を少し尖らせて皮をむいた渋柿を10個ほど串刺しにしたものを10本ほど作って縄でつないで囲炉裏の火だなにぶら下げておくのでした。どこの家でもこんな光景が見られたほどでした。
 その外、骨を束ねた頭の部分は、骨を外したあとはタワシ代わりに祖母が鍋の底などをガリガリとこすって炭垢を落としていました。
 また、柄の部分は杖にしたり、秋に大豆や小豆の束の根の部分の土を落とすのに使われていたことを憶えています。
 今、こうして思い出しますと、昔はカラカサだけではなくいろいろな品物を大切に使い、壊れた物も再利用して最後灰になるまで生かし切った生活に頭が下がる思いがいたします。
      文・図 田辺雄司 (居谷在住)