民具補説

      ハバキとスッペイ

 ハバキは、主に冬にワラで作ったスッペイを履いたときにひざ下のモモヒキが雪のために濡れて冷たくならないように履くのでした。また、昔は春木に出かける時にも足を傷つけないようにハバキをしていきました。
ハバキとスッペ
 冬道を遠くから歩いてきた人、とくに郵便配達人など家に立ち寄った人を家に招きいれるときなど、玄関にスッペやハバキをぬいで入って休んでいる間に氷ってしまうので、それらをはずさないまま膝をついて這って来て地炉(囲炉裏)に薪を2本置いた上に足をあげて休んでもらうのでした。
 しばらく、お茶を飲んでいる間にある程度はスッペもハバキも乾いて温まるので客も「ああ、あったまったえね」と言いながら、地炉の中でゆるんだスッペのヒモやハバキをしばり直して又這って玄関まで行くのでした。
 ハバキは、主に稲の穂の柄であるヌイゴをよく柔らかく叩いて細く編むのでしたが、中に木綿糸を2〜3本くらい入れて丁寧に編むので何年も使うことができました。また、水はけがよいというので夏によく乾かしたヒョロロという草で作る人もいました。いずれにしても、遠くまで冬道を出かけるにはワラグツでは重くて足の運びが悪いので、ほとんどの人はスッペにハバキを巻いて遠路を往来したものでした。               
                       文・図 田辺雄司(居谷)