民具補説
               土蔵と鍵
 土蔵には2種類の建て方がりました。ひとつは壁に板を打ち付けたもので、もう一つはサヤ造りというものです。サヤ造りは「サヤ蔵」と呼んで土蔵の外側に白壁を塗り、2尺(約30p)くらいのすき間をあけてサヤのように家で覆う方法です。
 屋根は、サヤにあたる建物は、芯になる土蔵の白壁の屋根の上に5〜6寸(15〜18p)の土台石を載せ、その上に短い柱を立てて造るのです。屋根はコバ葺きで(戦後トタン葺きに変わる)した。サヤ蔵は私たちの集落では少なかったように思います。サヤ蔵のことを「二重蔵」とも昔の人は呼んだ記憶があります。
 入り口の戸は3枚で内側は金網がはってあり、真ん中の戸は厚いケヤキ板や上半分格子の戸でした。一番外がわの戸は厚い土壁で出来ていて表面には白壁が塗られて居ました。
 錠は一番外側の戸にはなく、2枚目と3枚目の戸にありました。家では土蔵の鍵は大切に保管され、私の家では主に祖父が夕方に鍵をかけて朝に開けるのでした。
                文・図 田辺雄司(居谷)