民具補説
                ダイモチ綱
 昔、家普請のときに使ったと想われるダイモチ綱は今でも見かけますが、かなり太く、いかに当時の人達が苦労をしたかを物語っています。
 時が流れ、私たちの時代(昭和のはじめ)になりますと縄の作り方も自ずから変化し2分5厘の縄を3本寄せにし縒りをかけてある程度のばしておくのでした。昔はワラをよく叩き柔らかくして縄をなったのでしたが、時代が変わると機械で縄をなうようになりワラをよくたたくと綯わない機の藁差し込み口のラッパに藁をうまく差し込めなくなるのでした。藁が途切れると縄が細くなったり途切れたりしてしまいます。そこで藁を余りよく叩かないで、足踏み縄ない機で使いやすい程度にしておきました。
 しかし、よく叩いた藁でなった縄に比べると明らかに強度が低下します。それで、ダイモチ綱を作る縄をなうときには、ヤマ藤の皮を細く割いたものを藁に混ぜてなったものでした。その縄を3本寄せて3人かがりでヨリをかけて作ったものですがそれでも往々にして切れることがありました。特に、晴天の夕方ダイモチ引きに使った縄を外気にさらしておくと凍ってしまうことがあり、そのようなときに朝、いきなり使うとプツンと切れてしまうことがありました。縄が凍っているのが原因ですので、そんな時には風呂の水を縄にゆっくりとかけて凍りを解かしてやりました。そして、忘れずに綱に御神酒をかけたり塩をかけて清めてから仕事を始めるのでした。
 また、縄が凍ることを防ぐために古いムシロをかけて置きますと翌朝安心して使うことが出来ました。
 一方ソリの方は、ソリの左右2本を横木で連結して一台のソリにするには太いヤマ藤の皮をむいて叩いて柔らかくしした後、横木とソリをしっかりとしばるのでした。藤の皮は大変強靱であり凍っても簡単には切れることはありませんでした。
 また、昔、家を建てるとき、大勢の人達で引っ張る太いダイモチ綱は綱に枝綱をつけて数多くの人々が握りやすい縄で引けるように工夫したと聞いています。

ダイモチ橇とダイモチ綱
                         文・図 田辺雄司(居谷)